この記事でわかること

・ fifthグループが技術教育の基準をそろえるために行っていること
・ スタッフの目標やモチベーションに合わせた教育担当者の関わり方
・ 技術だけでなく、人間性やサロンの価値観を伝える教育
・ カミキュラムを活用した教育コンテンツと学習状況の共有方法 

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「早く実践できる」から逆算して、学ぶ順番を組み立てる

fifthグループでは、アシスタント教育を店舗だけに任せるのではなく、教育担当者が教える「アカデミー」と店舗での教育を組み合わせています。その背景にあるのが、“店舗や指導者が増えても、技術の基本となる部分に大きな違いが生まれないようにする”という考え方です。

 

ーーアカデミーと、店舗での教育はどのように使い分けているのでしょうか?

石橋さん:店舗が多いので、スタイリストに任せる部分は任せています。ただ、どうしても教え方にムラが出たり、『先輩にはこう言われたんですけど』ということが起きたりする。そこをなくすために、アカデミーではベーシックなものを教えて、技術の統一を図っています。

ブランドによって「最初に学ぶ技術」を変える理由

さらに特徴的なのが、すべてのブランドで同じ順番にカリキュラムを進めるわけではないこと。

メンズを中心とするfifthではパーマ、ブリーチカラーを軸とするcinqではカラーなど、それぞれのお客様やサロンワークに合わせて、早い段階で必要になる技術から学べるように組み立てています。石橋さんによると、fifthでは入社4か月ほどの1年目スタッフが、すでに営業中のパーマ施術に参加するケースもあるそう。

難しい技術ほど、“誰にでも伝わる言葉”にする

早くサロンワークに参加するためには、ただカリキュラムを前倒しすればいいわけではありません。fifth・cinqが大切にしているのが、技術や理論をできるだけシンプルに整理し、共通の考え方として伝えることです。

「結果、何をすればいい?」をなくす教育

ブリーチやパーマなどは、薬剤やケミカルの知識を掘り下げるほど情報量が増えていきます。だからこそcinqでは、最初からすべての知識を詰め込むのではなく、新卒やアシスタントにも理解しやすい形へ整理していると青柳さんは話します。

 

青柳さん:美容師ってケミカルがつきものですけど、難しくすればするほど『私にはできないんだ』という考えになってしまう。誰に言っても伝わるマニュアルがすごく大事だと思っています。

 

まずは現場で判断・実践するための基本をわかりやすく伝え、そのうえで、より深く学びたいスタッフは専門的な知識を広げていく。

“たくさん教えること”ではなく、教わった人が実際に動けるところまで整理することも、教育担当者に求められる役割の一つです。

教育担当者が最も悩む「モチベーション」にどう向き合う?

技術の基準やカリキュラムを整えても、それだけで教育が進むとは限りません。お二人が教育担当者の難しさとして共通して挙げたのが、スタッフ一人ひとりのモチベーションとの向き合い方でした。

ーー教育担当者がつまずきやすいのは、どんなところだと思いますか?

石橋さん:教育する子に対するモチベーション管理じゃないですかね。どうやって伴走するか、その子の今いるところから外側へ向けさせられるかというところが、一番重要かなと思います。

 

では、その“伴走”は具体的にどう行っているのでしょうか。

大きな夢ではなく、本人が目指したい未来から逆算する

石橋さんがスタッフと話す際に確認しているのは、「その人自身がこれからどうなりたいのか」。

 

石橋さん:将来を握って、現状を伝えて、そのギャップをどうやって埋めていこうかというのを一緒に話していくことは、よくやります。

 

目標を決めるだけではなく、「今やっていることが、自分の未来とどうつながっているのか」を本人が理解できる状態をつくる。 それが、継続して学ぶための一つの支えになっています。

一方で青柳さんは最近、教育する側としての関わり方を考え直す出来事があったと振り返ります。

青柳さん:ポジティブに変換して、もう一度ゴールに向かわせてあげることが正解だと思っていた部分があったんです。でも、求めているのはそこじゃなくて、過程をしっかり評価してほしいということもあるんだなと。

 

教育担当者から見れば、「本人が決めた目標だから、達成できるように背中を押したい」と考えるのは自然なこと。しかし、その日の本人に必要なのは、次の行動を促すことではなく、「ここまでできた」と一度認めてもらうことかもしれません。

 

青柳さんはこの経験から、一人で抱え込まず、必要に応じて別のスタイリストに任せることも選択肢だと感じたそうです。

仕組みは共通化しても、人への向き合い方まで一つの正解にしない。 教育担当者自身も、スタッフとの関わりの中で学び続けています。

技術だけではなく「人としてどう働くか」も教育する

fifthグループでは現在、技術を学ぶ「スキルアカデミー」に加えて、人間性や会社の価値観について考える「ヒューマンアカデミー」も実施しています。

店舗で出てきた悩みや1on1で拾った声をもとに、会社のミッション・ビジョン・バリューと照らし合わせながら、「会社としてどう考えるか」「自分自身はどうなりたいのか」を話し合う場です。

 

店舗やスタッフ数が増えれば、創業時からいるメンバーと、新卒・中途入社のスタッフでは、これまで共有してきた背景も異なります。

だからこそ、一度伝えて終わりにするのではなく、繰り返し話す場をつくる。技術をそろえるだけでなく、「なぜこのサロンはこの考え方を大切にするのか」まで共有することが、組織が大きくなっても同じ方向を向くための土台になっています。

全国に広がっても“学ぶ基準”を共有するために。カミキュラムの活用

複数のブランドや店舗を展開するfifthグループでは、教育コンテンツをまとめ、スタッフの学習状況を確認するために「カミキュラム」を活用しています。

カミキュラム内には、ベーシックな技術だけでなく、メンズカット、ブリーチ、マーケティング、撮影など、さまざまな教育コンテンツを格納。スタッフは動画や画像で予習・復習し、教育担当者は質問やフィードバック、学習状況などを確認できます。

「見て終わり」にせず、教育担当者との会話につなげる

学習状況が見えることについて、石橋さんは「頑張っているスタッフにフォーカスできる」というメリットも挙げています。

単に視聴時間や回数を評価するのではなく、「今どの技術を学んでいるのか」「どこでつまずいているのか」を知るきっかけとして活用する。店舗数やスタッフ数が増えて、教育担当者がすべての練習を直接見ることが難しくなっても、学習状況を把握できれば、必要なタイミングで声をかけやすくなります。

 

共通化できる部分は仕組みに任せるからこそ、教育担当者は、一人ひとりの目標や悩みに向き合う時間をつくれる。

今回のお二人の話からは、教育の“仕組み化”と“人に向き合うこと”は、どちらか一方を選ぶものではないことが見えてきました。

まとめ

fifth・cinqの教育から見えてきたのは、「そろえる部分」と「一人ひとりに合わせる部分」を分けて考えることの大切さです。

技術のベーシックやマニュアルは、誰もが理解しやすい形に整える。一方で、目標やモチベーション、必要な声かけは、その人を見ながら変えていく。

教育を仕組み化することは、人との関わりを減らすことではありません。共通化できる部分を整えることで、教育担当者が本当に向き合うべき“人”に時間を使えるようにする。スタッフや店舗が増えて教育のあり方に悩むサロンにとっても、取り入れられるヒントが多いライブとなりました。

 

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EDITOR’S REVIEW

今回のお話で印象的だったのは、「教え方は統一しても、向き合い方は一人ひとり違う」という考え方でした。技術の基準をそろえることで、スタッフが安心して学べる環境をつくる。一方で、目標や悩み、成長のペースには、それぞれに合った関わり方が必要です。自分のサロンでは、どこを仕組み化し、どこに人が向き合う時間を使うのか。そんな視点で、日々の教育を見直すきっかけになればうれしいです。