この記事でわかること
・ 若手の成長を“やる気任せ”にしない教育の考え方
・ スタッフの状況に合わせて教育方法を変える理由
・ AMA TOKYOが技術とSNSを並行して教える理由
・ カミキュラムを活用した学習・進捗管理の考え方
プロフィール|山下コウスケさん

Instagram:@amatokyo_kousuke
「練習しない」を、若手だけの問題にしない
若手スタッフがなかなか練習しない。声をかけても、自分から動いてくれない——。教育担当者なら、一度はそんな悩みにぶつかったことがあるかもしれません。山下さん自身、以前は「全員を後ろから支えながら育てていく」というスタンスだったといいます。
ーーご自身で“教育”において一番大切にしていることってありますか?
山下さん:教育について大切にしていることは、昔と今で変わってきました。元々は、全員を後ろから支えながらいくスタンスだったんです。大体のサロンさんも、“技術ができない子・練習をやらない子を、いかにできる子に育てるか”っていうところにパワーを使っていると思います。でも今の僕たちは、できる子にフルベットするという考え方ですね。
まず積極的に取り組むスタッフの成長を加速させる。その姿に刺激を受け、周囲にも動き始めるスタッフが出てくる。そんな流れをつくろうとしています。山下さんが重視するのは、“AMA TOKYOで働くことで、技術や知識を身につけるスピードをどれだけ高められるか”ということでした。

ーーでは、なかなか自分から練習へ向かえないスタッフには、どうアプローチするのでしょうか。
山下さん:“時間割”がすごく大事だと思っているんです。例えば8時間、9時間の労働時間の中で、何をやってほしいか。その時間をちゃんと設けてあげることがすごく大事だと思います。
AMA TOKYOでは、営業中に動画撮影へ取り組む時間を設けるほか、毎週金曜日の16時から20時までスタジオを借り、若手スタッフへの教育を行っています。
若手が動かないとき、「本人のやる気がない」で終わらせるのではなく、まず動きやすい環境をつくれているかを考える。人を変えようとする前に、環境を見直す。 山下さんの教育観を象徴する考え方です。
24個のカリキュラムで、“次にやること”を明確にする
ーーAMA TOKYOのカリキュラムは、どのように設計しているのでしょうか?
山下さん:スタイリストデビューまでのカリキュラムを24個に整理しています。1か月に1個合格していくと、2年間でデビューできるカリキュラムです。
さらに、教育のスタートは入社後とは限りません。内定後からアカデミーを立ち上げ、動画を使って予習や練習をスタート。山下さんによると、入社前の段階で5〜8個ほどのカリキュラムに合格したスタッフもいたといいます。
大切なのは、単純にデビューを急がせることではなく、「今どこにいて、次に何をすればいいのか」がわかる状態をつくること。ゴールから逆算して成長の道筋を示すことで、若手自身も次の一歩を考えやすくなります。
技術より先にSNS? “発信”も教育にする理由
AMA TOKYOでもう一つ特徴的なのが、早い段階からSNSに取り組んでいること。SNSというと、“集客やブランディング”をイメージしがちですが、山下さんは技術を伸ばす機会としても捉えています。

ーー技術カリキュラムと並行して、SNSにも早期で取り組むのはなぜですか?
山下さん:アイロン・ブロー・前髪の巻き方だったり、そういう細かい技術系をやることで、感性がどんどん上がっていくんです。髪の毛や道具に触れる時間が増えれば増えるほど、人に対してのクオリティも上げられていく。SNSも並行してやっていくことによって、どっちも加速していくかなと思っています。
SNSのために手を動かすことが、技術と向き合う時間にもなる。「技術」と「発信」を別々に育てるのではなく、一つの経験を次の学びにつなげていくのがAMA TOKYOの考え方です。
「教えた」と「伝わった」は違う。教育者も学び続ける
山下さんは、教育する側が陥りやすい問題についても率直に話します。
ーーこれまで教育をしてきた中で、「やってみたけれどうまくいかなかった」と感じたことはありますか?
山下さん:勉強会をやった際に、カテゴリーを細かく分ける方がいいなと思いましたね。大きなカット、カラーで分けるんじゃなくて、カットの中でも前髪やレイヤーなどの細かさで分ける。
あとは、展示を見せた後に、自分で落とし込んでもらう実技の時間を作ることですね。教育って、教える側の自己満で終わっちゃうことが多いんです。『よし、できた。うまく伝えられた』って。でも蓋を開けてみると、伝わってるのは多分半分以下なんです。
だからこそ、一度教えて終わりではなく、実際に手を動かす時間をつくる。もう一度伝える。フィードバックする。“何を教えたか”ではなく、“相手にどこまで伝わったか”を見ることが大切になります。

AMA TOKYOでは、スタッフの状況に合わせて、教育者との組み合わせも考えています。
ーー教育担当者に向いている人に、共通点はありますか?
山下さん:教育者を決める際に、“根本に技術を持っているか”という基準があります。僕自身も、技術に対して今でも上達したいと思っていますし、その思いや実力がないと教育者はできないと思うんです。
教育担当になったから、自分はもう学ばなくていいわけではない。教える人自身が、一人の美容師として技術を磨き続ける。その姿勢も、サロンの教育を支える要素の一つです。
“学ぶ過程”を数字で見る。カミキュラムを教育改善に活かす
スタッフや店舗が増えていけば、教育を進める中で誰がどれくらい学び、どこでつまずいているのかを、教育担当者が感覚だけで把握することは難しくなります。
そこでAMA TOKYOが活用しているのが、教育プラットフォーム「カミキュラム」。カミキュラムでは、教育動画やカリキュラムをまとめるだけでなく、動画の視聴状況や学習の進捗などを確認できます。

ーー学習状況が数字で見えることで、教育はどう変わりますか?
山下さん:なんであの子は合格数が早いのか?ってなったときに、これを見ることで『ちゃんと動画で知識を入れてるんだ』っていうのが、すごくわかりやすいんです。反対に、動画を見てテストにも取り組んでいるのに、なかなか合格につながっていない場合。「本人ができない」で終わらせず、教育担当者との組み合わせや、動画の内容改善など、教える側にも改善できることがないかを考えるきっかけになります。
結果だけでなく“学ぶ過程”まで見えるようになることで、教育そのものを見直す材料が増えていきます。実際にカリキュラムで学ぶ、若手スタッフの松永 凛花(マツナガ リンカ)さんにも動画の使い方を聞きました。

ーー実際にカリキュラムの動画は、どのように使っていますか?
松永さん:カリキュラムを見てまず流れを頭に入れて、その後実際にスタイリストの方に見てもらいながら角度や疑問を確認してもらっています。
山下さん:動画では100%全部教えるってより、80%〜90%ぐらいを理解できる構造にしています。そして残りの応用をしっかり対面でやっていくのがバランスがいいかなと思っています。
動画で基本を揃え、実際に取り組んで生まれた疑問や細かな応用は人が伝える。カミキュラムか、対面教育か、ではなく、それぞれの良さを組み合わせる。AMA TOKYOでは、そんな使い分けが実践されています。
仕組みをつくるのは、“人にしかできない教育”に時間を使うため
動画、カリキュラム、進捗管理、フィードバック。教育を仕組み化すると、人と人とのコミュニケーションが少なくなるようにも感じます。しかし、山下さんが目指しているのはむしろその逆です。
ーー教育を仕組み化することで、人が直接教える時間は減っていくのでしょうか?
山下さん:任せられるところはカミキュラムやツールに任せて、空いた時間で人間同士のコミュニケーションを取った方が、その人間性や会社に対しての貢献につながっていくと思います。
技術の基本は動画で。進捗は数字で見る。その分、「どこでつまずいているのか」「何に悩んでいるのか」「どんな美容師になりたいのか」といった、仕組みだけでは拾えない部分に教育者が向き合えるようになります。
山下さんの話から見えてきたのは、人を育てるために、あえて“人だけに頼らない教育”をつくるという考え方でした。
【サロン教育担当の本音会議 Vol.2】 アーカイブはこちらから↓
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まとめ
「練習しない」「なかなか成長しない」と感じたとき、本人の意欲だけに答えを求めるのではなく、まず“育てる環境”を見直してみる。仕組みに任せられる部分は任せ、人にしかできないコミュニケーションに時間を使う。
AMA TOKYOの教育から見えてきたのは、若手をただ「頑張らせる」のではなく、成長につながる行動を続けやすい環境を、教育する側からつくっていくという考え方です。
自店の教育を見直すとき、「このスタッフをどう変えるか」だけではなく、「このスタッフが育つために、サロン側は何を変えられるか」。そんな視点を持つことが、一つのヒントになりそうですね。
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個人的に印象に残ったのは、山下さんの「教える側の自己満で終わっちゃうことが多い」という言葉。教育する側は一生懸命だからこそ、“教えたこと”に安心してしまうこともあるのかもしれません。「伝えた」ではなく「伝わった」までを見るという考え方は、教育以外の仕事にも通じるように感じました。またカミキュラムのようなツールを利用した教育も、教育の課題を見直すための選択肢の一つになりそうです。








