仁田 隼人さんプロフィール

仁田 隼人さん  @hayato_nitta.jp

美容室採用専門家として、新卒採用活動をメインに活動。新卒採用特化型オンラインスクールを運営し、美容学校の教員や採用コンサルタント、美容師としても活動するマルチな仁田さん。数々の経験から伝わる情熱は、採用に悩む美容師の皆さんの心に深く響きます。 

ゲスト / Ryllis代表 安井裕太さん

安井裕太さん @yasu_sn  

東京都錦糸町で美容室 Ryllis を経営される安井 裕太さん。新卒採用や求人についての経営者さんのよくある悩みを代弁・質問をしていただきます。 

なぜ『新卒採用』をするのか答えられますか?

まずはじめに、悩まれる方が多い事案として「新卒採用」があります。

そもそも、“あなたはなぜ新卒雇用をしているのか” この部分がちゃんと明確になっていますか? 目先だけの採用になっていないでしょうか。 この部分を明確にするには、「事業計画」がちゃんと存在しているか?というところが大切になってきます。

新卒採用って育成期間があり、育成期間中も経営は進むわけです。事業計画っていうのは、「未来」を数値化した無形なものです。要は3年後、5年後に僕たちはこうなりたいよね、と未来を想定して作るもの。 そのために新卒雇用をして、そのために何年でデビューしていくという風に未来に繋げて行かないと、そもそもの新卒採用じゃないよ、ということです。もしそのプランが無いなら、中途採用の方がいいかもしれません。なぜなら中途採用の方が、事業計画が曖昧でも問題ないですからね。

そして、新卒雇用をするのであれば「事業計画」がなければ、学校とどうやって向き合うんですか?ということなんです。インスタで発信するだけで学生が来てくれたらそれでいいですが、よく考えてください。事業計画っていうのは未来を作っていくわけなので、1年2年3年・・10年とずっと続いていくじゃないですか?その計画を、学校と我々企業が向き合い続けていかなければ、成り立たないですよね。ここが僕の中の “大前提” になっています。

事業計画に含まれてくる要員計画なるものをちゃんと準備しておかなければ、何年に何人必要なのか?というところが見えてこない。何年に何人必要なのかが見えてくれば、それに対するTODOも見えてくる。 そのTODOが生まれたら、ただひたすらにタスクを回す、それだけなんです。こうした根底にあるものがちゃんと整理されていなければ、そもそもの「なんで新卒採用するのか?」という問いに答えられないですよね。 そして、この問いに対しての答えは会社のビジョンでいいんですよ。僕たちの会社は、こういう世界観を作りたい。そのためには5年後にはこうなりたい、そのためにはスタイリストだけではできなくて、循環させて新しい子を入れて育てて伸ばして回していくというところ。これが大元です。 

図のこの形が何よりも重要です。この形がなければ何がいけないかというと、手段がいくらでもありすぎて、手段に惑わされてしまうんです。 だから、毎年継続して結果を出し続けるためには、「事業計画を細かく分解すること」がおすすめですね。

採用とは人と人のつながり

ここからは、繋がりをテーマにお話していきます。 つながりには2種類があり、地上(繋がり)× 空中(広告系)です。 僕たちは「人対人」の仕事だから、人との繋がりを何よりも大事にした方がいいです。 じゃあ何処と繋がればいいのか? それは「学校」です。

求人票から見学への流れ

求人票と会社パンフレットについてです。

これについては、「A4もしくはB5で2つで1枚」で作った方がいいです。重要なのは、これらをPDFで残しておくこと。作りっぱなしではなく、公式LINEに転載するなどして毎年データとして活用しましょう。

学校で求人票を見てもらえる可能性より、学生が普段から使用する携帯を活用していく方がいい、つまり求人票だけでも、学校とデータ、2つの入口が存在するということです。 では、これをどうやって出口に繋げていくのか?です。

Q. 求人票の出口はなんだと思いますか?

→ それは見学ですね。

Q.もう1つ、求人票と公式LINE、どちらが学生が多くの情報を取得できると思いますかか?

→ これは後者です。自社の “求人用の公式LINE” を作った方がいいですね。

Q. では、この公式ラインを登録する場所はどこでしょうか?

→ それは ガイダンス です。このような学生と直接接点を持てる場所がいいですね。

 ガイダンス → 公式LINE → 見学に繋げる、この流れが大切です。

学校とのつながりがなぜ必要なのか?という話をしますね。 人はどこかへ足を運ぶ時、自分だけの情報ではなく人からの情報で行動することが多い。つまり生徒にとって、重要な存在である学校の先生の紹介または、生徒から先生への報告があることによって、自社を知ってもらい、また自社の説明をしてもらえる。先生が自社の広告塔になってくれるということを忘れちゃいけないんですよ。

学校に訪問しても生徒とは関節接点になるだけ、と思っていても、自社と先生の両側から生徒にアプローチできるということです。学生から見て、知らない企業の信頼性は低いですが、学校の先生の一言の信頼度は高い。信用度が高いことを取り入れていった方がいいんじゃないか、ということですね。 ここまでが求人票から見学への流れです。学校の先生の紹介の力が、すごいことはわかりましたよね。

学校訪問で失敗しない方法

では、学校の先生とどうやって繋がりを持てばいいのか?という話に入ります。

学校訪問の際に、初回から自社アピールしたら引かれます。他の企業と同じだな、と思われてしまうんです。

ですので、最初はアピールしないというところを重要視してください。ただこれには、カウンセリングスキルが必要ですけどね。美容師であればスキルがあること前提です。※ 自信がないよって方は、仁田さんのオンラインスクールへ(笑) 

では、自社アピール目的で行ってしまうとどうなるのか?

1回目 自社アピールできた ◎

2回目 話すことがない △

3回目 そもそもが機会がない ×

僕は、年間3回、4ヶ月に一回は学校に行ってくださいと言っています。先生が覚えてくれて、かつ学校訪問に年間3回以上行っているのは、学校に訪問している、もしくは求人票を送っている会社全体の15%くらいなんです。 イメージとして、求人票を送っている数は平均1,000社。その中で実際に学校訪問に行っている数は500社。500社の15%は? わずか45社なんですね。 

学校訪問のポイント

Q.では学校訪問の際に何を話せばいいのか?自社アピールをどのタイミングでやればいいのか?

→ 答えは2回目と3回目です。

1回目は学校に合わせにいく、そのポイントは必ず学校のホームページを丸暗記することです。僕たち美容師が、新規のお客様がいらした時に最初にすることは「相手を知る」ことですよね。いきなり自分の話ばっかりしないじゃないですか。それと同じで、必ず学校のことを必ず理解して行く。読んでいくだけではなく、ここで大事な採用のポイントっていうのは、学校の信念です。信念を覚えて、自社の理念を必ず紐付けておくこと。そうすることによって話を深掘りすることができます。学校との共通認識、共通言語を持つことが重要ということですね。

〈 例 〉 学校が「絶対に諦めない」を信念にしているとしたら、僕たちの教育理念は「誰一人絶対に遅れない教育」をしていますと話す。そのために僕たちはこういうことをしています、と話したくなるんですが、そこで「先生方はどうやって取り組んでいるんですか?」ということを1回目で聞きに行く。「そうなんですね。僕たちもこういう信念持ってるんですけど、そういうところすごく共感できるんです。」と共感を軸にすること。

1回目は共感。2回目はちょっと僕たちの話を聞いてくださいね、の形。そして3回目は情報交換です。 なぜ情報交換をするのかというと、学校の先生は美容業界のことを結構知らないから。そもそも、僕たちが今業界がどういう風に動いてるのか知らなければ話せないですげどね。ここではただ業界の話をしに行って欲しい訳じゃなくて、業界の話と自社をリンクさせた状態を伝えてほしくて、「今、自社はどういう取り組みをしているのか」を説明してほしいんですね。ここまでが訪問のポイントです。

ただコロナを機に、学校訪問をNGにしている学校もあります。この場合はどうしたらいいのか?それは、オンラインか対面かメールか、学校の先生に選んでもらうというボールを投げ、ボールを処理してもらうことです。 その時僕たち自身がオンラインに慣れてないです、とかそもそもカウンセリング下手ですっていう意見も出る場合があるんですよね。練習すればいいじゃないですか。そのくらいはやりましょう。やったことないからできない、は言い訳になってしまっているので、やったことないならばやればいい。できないならば、できるようにすればいいんですからね。

採用のための行動と時期

今夏休みに入っているのでチャンスといえばチャンスです。 なぜ学校訪問がチャンスなのかというと、これが第一ピークと第二ピーク。

美容室が閑散期の時って何か事前に対策を考えたり備えをしますよね?それと全く同じで、今の時期は閑散期で、学生が動きにくいんです。なぜかというと夏休みに遊びたいから。

この時に僕たちができる仕込みは、この後の9〜11月の学生が動く時期に対して、学生が動きやすい環境を7. 8月に作るんです。ここを重要視してます。 じゃあ何やるの?っていうと、何よりも学校訪問。リクルートアカウントでのインスタライブよりも、学校訪問ですね。

そこでリクルート用のアカウントも必要になって来ます。公式LINEだけあればいいのではなくて、Instagramのリクルートアカウント=会社パンフレットの役目をしてくれます。学生が見てくれる会社パンフレットがInstagram。 では学生は求人票を見ますか?となってくるわけですよ。学生で求人票の見方を知ってる人の方が少ないですよね。じゃあ誰が見るのか? 親御さんです。 求人票は親御さんが見てくれる前提で作り、Instagramは学生が目で理解できて、なおかつ楽しめるように作っていく。こう考えると作り方の意義が変わります。

ちなみに、親御さんの手に渡るまでには、誰の手に渡りますか? 最初は学校ですよね。その次に、学生が手にするのではなくて「見る」。貼ってある、またはファイルにあるものを見ます。それがいいな、と思ったらPDFから親御さんが見てくれる。ということは、「携帯で見た時の見やすさ」までこだわらないといけない。そういうところにこだわっていくと、導線が繋ぎやすいんじゃないかなと思います。

アフター

学校訪問後、3日以内にお礼のお便りを送りましょう。メールなど楽なものに慣れてきてしまっていますが、日本人はやはりお手紙をもらうと嬉しいものですからね。

カチカチのお手紙にする必要はないんです。どういうところに共感し、どういうところが気付きになったかという事や、学校の先生にその時間が有益であったことが伝わる、気持ちがこもった温かいお便りがいいですね。そしたら次回の学校訪問も快く受け入れてもらえるのではないでしょうか。

他にお便りを送付するタイミングとしては、

・サロン実習終了後や内定後、学校の先生に送る。

・内定後、親御さんに会社説明の機会をいただくためのお便りを送る。

 

採用っていうのは、仕組みがどうこうよりもやっぱり人柄とか暖かさが直結しやすい部分なので、学校にも内定が出た学生とその親御さんにも感じてもらいたいなと思います。そこで「お便り」っていうのは1つの武器になるのではないかと思いますね。

 

 

 ーー(四方田さん)美容師ではないので素朴な質問なのですが、事業計画ってどうやって考えたらいいんでしょうか? 

銀行に提出するので、本来あるものですね。事業計画に売上だけを乗せていく人が多いんですけど、それを叶えていく、本業をしっかりやるっていうのが何より信用に繋がるんじゃないですかね。意外と、事業計画について知らない人が多いんです。事業計画は未来を作るための事業計画書=ビジョンです。フォーマットとかあると作りやすいかもしれないですね。

たまに、人によって計画なく行動を起こしていく場合もあるかと思いますが、計画のゴールを無くしてちゃんと進めるのか?って思っちゃいますね。事業のゴールって、売るか上場するか、具体的に考えて行かなきゃいけないんですね。人はずっと生きていけないので、自分がいなくなった後のことも考えてもいいんじゃないかなと僕は思ってます。 そうしたら、自社がその場所にある意味って何?っていうところにたどり着きますよね。僕は「なぜ新卒採用するの?」っていう言葉に、こういう考えを込めています。 「人が足りなくて」ではなく、それにどのくらい前から気づいていましたか?「計画があってそれ通りにやってたんだけど、それでも人が来ない」っていうのと、「ただ単に計画がなくて、人が足りない」っていうのじゃ、全然ものさしが違うわけですよ。だから事業計画を重要視している。 

前編まとめ

ではここで、前編で学んだことをまとめてみましょう。


・あなたはなぜ新卒雇用をしているのか、明確になっているか?

・「事業計画」と「要員計画」はちゃんと存在しているか?

・新卒採用の大前提は、その計画で学校と我々企業が向き合い続けていくこと

・2種類のつながり、地上(繋がり) × 空中(広告系)

・私たち会社がつながるべきなのは学校

・求人票と会社パンフレットの考え方と作り方

・見学へという出口につなげるため求人用の公式LINEを持つ

・ガイダンスへ行くことでつながる未来がある

・学校の先生との繋がり方

・学校訪問の初回で自社アピールをしない

Instagramのリクルートアカウント= 会社パンフレット

・学校訪問後、お礼のお便りを送る

EDITOR’S REVIEW

新卒採用についてどう動くのか?だけでなく、どう考え、計画するべきか。何年も先のことを計画することは難しいですが、そこがないと未来につなげるのが難しいんだなあと深く考えさせてもらえる前編となりました。
細かく分解して考えることは採用以外のことでもすごく当てはまるので、実践していきたいですよね!後編は、具体的にどう動いていけばいいのかがわかる実践的な内容です!ぜひ後編もご覧ください^^