堀江さんはこんな方
3年連続カミカリスマを受賞している表参道の美容室「JENO」の代表。
ナチュラルでかわいいショートやお手入れが簡単なまとまるカットを得意としており、ナチュラル・シンプルをベースに幅のあるデザイン力で、雑誌、セミナー、ヘアショーなどマルチに活動されています。また、カットオンラインサロン「ホーリーのオシャレカット塾」にて、骨格や髪質対応、似合わせ、デザイン提案、カウンセリングの解説も行っています。技術と感性を高いレベルに持っていくことが大事だと考え、日々研鑽しているそうです。
サッカー少年から美容師を目指したわけ
――いつ頃美容師になろうと思われたんでしょうか?
えっとー、高校2年生の頃です。行きつけの美容室で美容師ってかっこいいなぁって思ってた時に、美容専門紙を見せてもらったのが初めだったんですよね。ちょうどTOMOTOMOとか新美容とか。
「美容師ってどうなんですか?楽しいですか?」って話を髪切ってくれてる人に聞いたら、「めっちゃいい仕事だよ」みたいに言って、そういう業界の業界誌を見せてくれたんですよね。「美容師って、頑張れば、こういうような雑誌とか、そういうこういうクリエイティブな表現とかもできるし、すごい面白い仕事だと思う」って。
その美容師さんはそういう雑誌に載るようなことをされてる方じゃなかったんですけど、それがきっかけで美容師の可能性っていうのを高校生の時に知れて。で、いつかはそんな有名な美容師さんになりたいな~、みたいな、ふわっとした感じで思っていましたね、その当時は。
――ご出身はどちらで?
出身は滋賀県で、もともと高校卒業するまではサッカーをやってたんですよね。小学校からやってたんですけど、関西の選抜に入ってたり、中学校の時ブラジルにサッカー留学したりとかで、ほんとにサッカーで将来食べていきたいってずっと思ってたんですよ。けど足のじん帯を切ったときに、やっぱり怪我とかで一生棒に振る可能性もあるし、サッカー選手って5,60歳までは、長くは食べていけないなと思いました。
なので、一生できる仕事であって、なおかつ自分が頑張った分だけ結果が出るというか、成長できるような仕事したいなっていう風に思っていました。さらにそこでちょうどカリスマ美容師ブームっていうのもあったりしたので、美容師に興味を持ってたんですよね。そういう中で、先ほど話したように雑誌で美容室の可能性について知れたので、そこから大阪のル・トーアって美容学校に行きました。
―― サッカー少年だったんですね⁉
割と体育会系でしたね。28歳くらいの時から今もほぼ毎日朝ランしてるんですけど、身体動かすっていうのは元々好きでしたし、自分が努力した分だけ成長に繋がるっていうのはスポーツを通して分かっていたというか。絶対に結果が出るまで続けるとか、努力を惜しまずやるとか、やっぱりそういうようなマインドはサッカーを通して学べたっていうのはありますね。
目標を追いかけ、掴んだ優勝
――美容師という職業のどういった点に惹かれたんですか?
そうですね…。今だからこそ、お客さんのライフスタイルに寄り添ったりとか、人をハッピーにできたりとか、そういったところの魅力や楽しさっていうのを一番に感じるんですけど、当時は本当になんだろう…有名な美容師になりたい、とにかくなんか雑誌の撮影とかができる美容師になりたい、みたいな、ザックリとした思いしかなかったですね。
東京に出ようとか、1年生の頃はそこまで思っていなくて。だけど、将来はパリコレに出れる美容師になりたいとか、高校生の時からVOGUEみたいなファッション誌をすごく見てたんで、そういうようなところで活躍できる美容師になりたいとか、なんかそういうとてつもなく大きな夢や目標を常に考えていましたね。
――高い志を持っていたんですね。
美容学校の時もやっぱり学校で一番になりたかったんで、友達とかと遊ぶ時間をあんまり作らずひたすらオールパーパスの練習とかしてましたね。特に、僕が行ってたル・トーアはオールパーパスにすごく力を入れている学校で、それで結果出せる人は良い美容師になれる、上手い美容師になれるみたいに言われてましたし。あとやっぱり「すごい!」って言われるのは嬉しいし。なので、「とりあえず一位になろう!」って、めちゃくちゃ練習しました。
なんですけど、初めて1年生が出るワインディングコンテストで入賞もせずかすりもしたかったんですよ。すっごい練習したのに。 それが本当に悔しくて、そこからさらに今までよりも練習とかをするようになったんです。そしたら、大阪の全美容学校の1,2年生が全員出る大会があったんですけど、1年生だった僕が優勝したんです。それからは学校のコンテストとかでも、優勝、準優勝、一位だったり、割と高い成績が残せたんです。
「堀江って真面目だよね」オリジナリティの原点を振り返る
けど、あるとき仲のいい友達に、「なんか堀江って真面目だよね」って言われたことがあって。今だったら真面目とかそういうのって、なんだろう、“ちゃんと自分に向き合って努力をしている人”みたいな良い解釈ができるんですけど、その当時は、頭がかたい、融通が効かない、頭でっかち、みたいな、そういうような感じに捉えてしまったんですよね。
まあ、友達もどちらかというとそういう風に思っていたのかもしれないですけど、やっぱり“真面目”っていうことに対して、すごくこう…なんかムカつくなみたいに思っていて。
でも、そういう風に言われて自分の中でいろいろ考えたときに、確かに、オールパーパスみたいに学校で先生から出される課題って、先生に言われたことが完璧にできれば100点取れるようなものだけど、それはまあゆったらその人のコピーになってしまう。それって、これから自分が美容師になった時に、果たしてオリジナリティのある、何か他の人と違った美容師になれるのかな?と思ったんです。
まあそういうのももちろん大事だけど、もっと自分にしか出来ないことだとか、自分の可能性を引き出すことを、今の時間絶対やった方がいいなっていう風に思ったんですよ。なので2年生になってからは、もともと絵を描くのがすごく好きだったんで、学校の授業以外の時間に抽象画描いたりとか、映画を見に行ったりとか、そういうもっと感覚的な、イマジネーションが膨らむようなことを中心にやるようになりました。
そういうのもあって、後に入社するapishの面接のときとかも、「これがアピッシュのイメージです」って言って、大きいベニヤ板に絵を描きました。そしたらそれがインパクトがあったみたいで、なんかこいつちょっと他のやつと違うから、面白いから採ろうか、みたいな感じで入社も決まったんですよね。
――なるほど~、オリジナリティが評価されたんですね!
そういう感じで、今までずっと真面目に休まず学校行ったんで、このまま卒業してもいいかなとは思ったんです。けど、どうせだったら今のうちにしかできないことをしようと思って。
自分っていう人間がこれからどういう風にやっていったらいいのかなっていう不安もあったんで、先生に「やっぱり自分をもう一度見つめ直す時間が欲しい」っていう手紙を書いて、ベトナムに一人旅に行きました(笑)。2年生の頃に10日間ぐらい。航空券だけ買って、宿とか全然取らずに、バックパッカーでベトナムのハノイに行きましたね。で、そこからハロン湾っていう湖がある所まで行ったりとか。
そうやって旅をして、そこで現地の日本人の方と出会っていろいろ話したんです。そしたら、僕が帰る前日ぐらいに、飛行機の中で読んでくださいって言って手紙を渡されたんですよ。「堀江くんは自分探しの旅に来てると思うけど、自分っていうのは自分の中にしかいないから、自分を大切に、自分がいいと思うことを全力でできるような、そんな美容師さんになってくださいね」って書いてあって。自分探しの旅は、自分の中にいるっていうところで答えが見つかりました(笑)。
門前払いされても…。自らの手で手繰り寄せた女性誌の仕事
――いやぁすごい!そこからapishさんに入社されたんですよね。
そうですね。今も同じ会社で、コツコツやって28歳で店長になりました。デビューは25歳ぐらいで、当時もやっぱり雑誌の仕事はしたかったんですけど、女性誌の仕事は少なかったんです。その時はちょうどCHOKiCHOKiブームで、うちのお店もメンズ雑誌はすごく依頼があったんです。けど、女性誌は有名サロンに比べるとちょっと少なかったんですよね。
でも、やっぱり僕は女性誌の仕事をしたかったので、自分で作品撮りしたりとかいろいろやって、結構他社さんに売り込みに行ったりしました。一般紙も業界紙も。minaとかSEDAとか装苑とかMOREとか、もうとりあえず雑誌全部にアポとって行ってましたね。まあ門前払いされるようなこともありましたけど、とにかく行ってました(笑)。
――今と全然違いますね。今は逆に雑誌社さんの方からお願いしに行ってる感じですけど。
はい。全然パワーバランスが違いましたね。それでまあポロポロッともらった仕事を一個一個つなげて、本当に一個一個積み上げて積み上げて、っていう感じですね。それでちょっとずつそういう雑誌の仕事が増えていったりとか、業界紙の仕事も一個一個増えていきました。
――本当に努力のかたまりですね。
でも、やっぱりすごい好きでやってるんで。努力というよりかは、自分が好きなものを継続してきた結果という感じですね。多分周りから見たら努力とかって思われるんでしょうけど。僕も周りの頑張っている人って、やっぱりちゃんと努力してるなぁっていう風に思うんですけど、多分当の本人はみんな努力と思ってないんですよね。
一番じゃなくてもいい。個性を活かしてユーティリティ性のある美容師に
――誰にも負けないと思う技術を教えていただきたいです。
やっぱり、ナチュラルでかわいくてオシャレ感があるショートとかボックスタイル。あとは、まとまるカット。どんな髪質の人でもすごくまとまるというか、落ち着くというか…っていうのがやっぱり得意ですね。
画像引用元:堀江さんInstagram
――それはいつ頃自覚し始めたんですか?
そういう風に思ってきたのはここ3年ぐらいですかね?それを一つ自分の売りにしたいなというか、やっぱり自分の強みだなっていう風に思えてきたのはそれぐらいですね。
僕、これっていう特化がない美容師だったんですよね、ずっと。割と色んなことに興味があったので。それこそJHAみたいなフォトコンに応募したりとか、そういうクリエイティブなことは今もやっていますし。あとは、ありがたいことに、一般誌からそういうクリエイティブな業界紙まで幅のあるお仕事の依頼をいただけている方だなと思っていて。
ただなんかまあ、裏を返せば器用貧乏というか、わりとこう…何でもそつなくこなすタイプというか。自分では別にそんなに器用な方だとは全く思ってないんですけど、割といろんなところに顔を出すタイプではあるので。それがなんか僕的にはちょっと嫌だったんですよね。嫌というか、やっぱり特化型美容師がすごく注目されて、ジャンルの一位になりたいみたいな、そういうのはすごく思っていたんです。でも、カットでもクリエイティブでも、フェミニンなスタイルを作らせてもなかなか一位になれなくて。
けど逆に、そんなにバランスよく色々できる美容師さんっていうのもあまり居ないなぁっていう風に、自分で思ったんです。周りからも、「そうやって色々できる美容師ってすごい貴重だよね」みたいに言ってもらうことが多かったですし。だから、そういうユーティリティ性のある美容師っていうのも、特化型美容師が多いからこそ逆に貴重なのかな?って思って。
何かの一番にはなれないかもしれないですけど、まあ、四番、三番とか、あわよくば二番とか、そういうところを狙える「ユーティリティ性のある美容師」を自分の武器にしようっていう風に、ここに3年でなりましたね。まあその中でもカットが得意で。だけど、PEEK‐A‐BOOさんとかDADAさんみたいに、もっとカットに対して緻密で理論的な方々はいらっしゃるので、僕は「一般の人たちをナチュラルでかわいくおしゃれ感に作る」っていう部分を自分の武器に、っていう風に今は思っていますね。
――好きなことが上手く掛け算になれば、自然とそれが自分の良さになりますよね。
そうですよね。そうなると気楽だし、人と比べることをしなくなりますよね。そうするともっと自分の色が濃く出せますし。多分周りも同じようなことを、僕達に対してや人に対して思っていると思うんですよね。だから、みんなそんなに人のことを気にしなくても、自分っていうもののオリジナルをどう出すかっていうのを考えれば、もっと楽しめるんじゃないかなと思うんですよ。どうしても比べてしまいがちなので。
悩んでいたとき、支えてくれたのは周りのみんな。
――苦手なや壁にぶつかったとき、どう乗り越えてきましたか?
そうですね…。周りの人に相談しますね。お店のこととかスタッフ教育とかスタッフ辞めるとか、そういう悩みって美容室には絶対付き物だと思うんですけど、自分だけでは悩まず一緒に仲間と相談するようにしています。
あと、やっぱりチームとしてやっている以上、自分が得意なこと、不得意なこととかはあると思うし、周りのスタッフでもそうだと思うんです。なので、自分ができないことは周りの人に助けてもらって、自分の長所を最大限に活かすためのチーム作りっていうのを意識していますね。
――なるほど。ただ、人に相談するのもなかなか勇気がいるかなという気もします。そのあたりはいかがですか?
僕はわりと、できないものはできないって言っちゃいますね。僕って、自分でデザインやって発信したりとか、勢いよくグォーン!って突き進むエネルギーはあるんですけど、その分足元がよく見えていないっていうちょっと危なっかしいところがあるんです。
でも、そういうのは周りがサポートしてくれたりとかするので。もしかしたら他の美容室だったらここまで来ていなかったかもしれないですし、今の自分があるのは、やっぱり周りの人が支えてくれたからこそだと思うんですよね。会社もそうですし、一緒に働いてきた子たちも。だから、そこの感謝はちゃんとしつつ、みんなが幸せになるようなことを考えてやっていきたいですよね。
ネガティブな悩みはポジティブな一歩へ
――悩みを抱える美容師さんにメッセージをお願いしたいです。
悩みって、僕の中では成長するための一つのきっかけだと思っていて。そもそも、悩んでいたことって、1か月くらい経つと結構忘れてません?だから、今悩んでいることも、悩んだ方がいいことだとは思うんですけど、そこまで深く考える必要があるものなのかなって考えた時に、そうじゃないことも多々あると思うんですよ。
…って考えたら、悩みを悩みと捉えるんじゃなくて、何か自分が成長するための一つのステップだっていう風に考える。そうすると捉え方も変わるし、アイディアがもっと広がると思うんですよね。マイナスな方向、ネガティブな思考になりがちなんですけど、どうすればポジティブになるか、嫌なこととも含めて楽しめるか、っていう思考にもっていくと、なんかもっと気楽にいけるんじゃないかな。
まあもしかしたら5年後も10年後も覚えてるような悩みもあるしれないけど、ほとんどが多分そんなことないから、大丈夫!(笑)
――ありがとうございます!めちゃめちゃ刺さりました…。
僕もめちゃめちゃ考える方なんですけど、意外と大丈夫です。あとは、サウナに行って、サウナ中でも悩んでるんだったら本当の悩みだなと思いますね(笑)。
サウナって、結構優先順位のハードルが分かると思うんです。サウナ中って思考が制限されるから、その時にずっと頭に残っているものが一番今重要というか、解決しないとダメなことだったりとかすると思うんですよね。それで、出たあとでもなんかくよくよしてたら、多分本当の悩み(笑)。
あとは、僕は今あるスケジュールの優先順位決める時とかも絶対サウナで考えます(笑)。何からやったらいいかって。
――なるほど~。ちょっとこれ参考にさせてください(笑)。
ぜひやってみてください(笑)。目つぶって、まあだいたい熱くても8分から12分くらいじゃないですか。この間で考えて、水風呂入って、整ってるときにまたちょっといろいろ考えて。そうすると、意外と悩んでいることもハッピーに感じたりします。違う角度で捉えられるんです。
悩んでるときって、一定方向の角度が多くありません?僕もそうなんですけど、なんかそれを裏を返せばとか、こういう風に提案したらとか、いろんな角度で考えられるようになると、ちょっと気楽になりますね。
世界中の人をハッピーに
――では最後に、堀江さんのこれからのビジョンをおうかがいしたいです。
ビジョン的には、自分がデザインすることとか発信することとか、いろんなことで世界中の人を笑顔にハッピーにできる美容師になりたいなぁと思うんですね。で、それはまあ今来ていらっしゃる目の前のお客さまっていうのがやっぱり一番大事だと思うんですけど、それはもうできて当たり前というか、絶対やるべきことだと思うんです。
もっと広い世界で見ると、やっぱり自分が美容師としているいる限り、なんだろう、自分の存在というか、そういったところで世界中の人をハッピーにできるような活動ができるようになればいいなぁと思っていて。
その方法も、まあ直接的には難しいかもしれないけど、間接的になんらかの形で関わったりとかすることでできることもあるのかなと思っていろので、それは今いろいろと考えていますね。
プロフィール
堀江 昌樹(ほりえ まさき)
JENO|代表
ル・トーア東亜美容専門学校を卒業後、新卒でapishに入社。早くから頭角を現し、「apish jeno」の店長を経て、全店統括のクリエイティブディレクターに就任。2017年2月に自身が代表を務める「JENO」をオープン。現在は、ナチュラル・シンプルをベースに幅のあるデザイン力で、雑誌、セミナー、ヘアショーなどマルチに活動している。JHA、THAなど有名コンテストでの受賞歴多数。
いかがでしたでしょうか??
堀江さんの真っ直ぐで温かなお人柄がよく伝わってくるインタビューでした。自分の個性を認めたり悩みをポジティブに捉え直したりという考え方には、心が軽くなった方も多いのではないでしょうか。
マルチにご活躍されている堀江さんは、BTのアプリアンバサダーでもあります。今後の堀江さん発信にも注目してみてくださいね!