田中さんはこんな人!

田中 征洋(たなか まさひろ)

福岡でサロンswitchを立ち上げ25年。「ダメージ&テクスチャコントロール」を提唱し、パーマで業界を牽引しています。セミナーや講師としての活躍はもちろんのこと、多数のメーカーでも商品開発を行い、パーマデザインの普及と教育に尽力されている方です!

ブレずに「かっこいい」を追い求めて、自然とたどり着いた美容師の道。

※上画像はインタビュー時に撮影されたものです。

――まず美容師になろうと思ったきっかけを教えて頂きたいです。

高校に入ってからですね。進学校に入ったので始めは漠然と自分も受験するんだろうなと思ってたんです。それが、その当時僕は自分で髪を切ってたんですけど、「どこで切ってるんだ」と同級生の間で話題になって…そこから友達の髪も切るようになりました。休み時間40分の間に10人来たりして、今より全然忙しい感じでしたね笑 その頃のスタイリング剤はとにかく固めるようなものしかなくて、カットでしっかり切られてないから皆スタイリングがすごく難しかったんです。ずっと「これじゃないんだよな…」という感じ。それで友達の髪も思うままに切りなおしていたら、意外と良いかもなと感じるようになりました。

 

――すごい高校生ですね!笑 ご両親はどんな反応だったんですか?

高校2年の頃にはもう美容学校に行くって決めてたんですけど、親は当然進学するだろうと思ってたので「何を言い出すんだ」という感じでしたね笑 でも僕が言い出したら聞かないというのも知っていたので、最終的には「勝手にすれば」という感じ。僕自身めちゃくちゃ考えて決断したというより、あまり勉強しなくていいしかっこいいし、なんならモテそうだしみたいな…みんなそんな感じじゃないですかね笑

 

――でも、ぶれずに自分の「好き」を追っていて美容師にたどり着いたんですね。当時美容師を志望する人は多かったんですか?

いやーどうですかね、そもそも美容学校がどこにあるのかも最初は情報が無くてわからなかったし学校の数も少なかったし…。僕なんかは就職するまで、美容師が接客業だって気づいてなかったんですよ。自分が10代で髪を切りに行った時も、女性美容師さんばかりの状況で緊張して全然話せなかったので、接客する人というよりも髪を切る人だと思ってたんです。美容学校に行っても黙々とウィッグ相手に練習するだけだったから、現場に出てそれを実感した時は「失敗したな…」と後悔しましたね。

 

――えー!そうなんですか!その後悔は国家資格合格後、すぐに感じられたんですか?

※上画像はインタビュー時に撮影されたものです。

当時は美容学校を1年で卒業して、就職する店舗で1年以上経験を積んでから国家試験が受けられるという流れでした。なので、卒業後インターンで店舗に入って数か月経ったころですね。シャンプーはまだよかったんですけど、パーマとか鏡の前に立つときにむすっともしていられないしお客様がつまらなそうにしていたら話さなきゃだし…黙々と作業するのが好きなタイプだったのでそこがきつかったですね笑

 

福岡と東京で築いたキャリア

――キャリアをスタートされたのは福岡ですよね。

そうですね。初めはSHIMAの福岡店からスタートでした。美容学校のときから東京は意識してたんですが、母がガンになってしまって。ただ絶対有名な美容師になるとは決めていたので、面接のときから「ここしか考えられません」と強く伝えていたら運よく福岡店に配属で取ってもらえました。その後母も回復したので、社長に直談判して東京へ行くことになりましたね。結局しばらくして福岡には戻ってきたんですけど。

 

――なるほど、福岡→東京→福岡と来られて、独立を。

そうですそうです。で、SHIMAからすぐ独立したんじゃなくて、一旦他の店に移ったんですよね。なんか、次期店長に指名されたことがあったんですけど、僕は「次の人が育つまで僕も一緒にやりながら待つんで」と言って断らせてもらってました。結局その後1年半くらいいて、もう人が育ったかなって時に別の店に移ったんですけど、そこも辞めることになってから、独立しました。その時はほんと「やるしかないじゃん」って感じで、思い切った決断でしたね。
始めは23坪くらいの二階建てで、スタッフは6人くらいでしたよ。

 

――福岡といえばswitchさん!というのが、やっぱり私はずっとイメージとしてあります。

※上画像はインタビュー時に撮影されたものです。

いやぁ、そうですね~。でもね、僕たちも頑張ってはいるんですけど、どんどん超えてくるようなサロンが出てきてないのって問題だなと思ってます。これはまた後からの話にもつながりますが、もう25年もやってて、僕も50代ですからね。東京はそういう意味では、先輩方も頑張ってはいるけど世代交代も上手くいってると思うんですよ。

 

――確かに。いい意味でガルガルしてるというか笑 やってやる!という部分があるのか…思うところはありますよね。

一瞬一瞬はいるんですよ。でも長い目で見た時には、「あれ、なんか最近聞かなくなったよね」ってやっぱなっちゃってるんですよね。なんか、どうしたもんだかって感じますね。

 

ことごとく失敗した経験が技術を磨くきっかけに。

――ここからは田中さんの技術についてお聞かせください!技術の腕を磨くきっかけとなった出来事はありますか?

もともといたSHIMAの先輩方はバリバリのデザインで売ってる方ばかりで、switchを出した時はちょうど第一次ブリーチブームだったんですよ。なので自分もかっこいいデザインをひたすら突っ走ってやってました。今ほど薬剤も良いものはなくて、カラー剤もバリエーションがあまりない中でカットデザインに飽きてきたときに、じゃあパーマじゃんってなって。本当に今考えたら当たり前なんですけど、そんな傷んだ髪にパーマをバンバンかけたらジリジリになるに決まってるじゃないですか!なので失敗の連続でしたね。この辺のアパレルでめちゃくちゃ目立ってた子達もたくさん来てたので、そういう子達の頭を失敗したら最悪だし!

 

――確かに。そういう人達はトレンドを追いかけてるからブリーチしてる人も多いし、違う店舗に行かれた場合の教育も必須だし…

そうそうそう。だからそのパーマ云々というよりは、できないことがあるっていうことと、実際にお客様の頭でやらかしちゃってそれをどうにかしないといけないとその時思ったんです。店やりやり始めて1、2年ぐらいですかね。そしたらもう勉強せざるを得ない状況になって、スタッフに同じ失敗をさせないように教育もできないといけなかったですし。もう本当にたくさん失敗したことが、技術を磨くきっかけになりました。

 

――なるほど…外部での活動はいつごろから始められたんですか?

えっとね、その時からすでにやってました。ただカラーしかやってなくて、ブリーチしたとこに色ドンと乗せて、うまくいけばもうオッケーみたいな感じだったんで、後先考えてとかっていうところまではいってないですよね。髪のコンディションを考えたりとかも。だからこそ、人前でやってる場合じゃないというか、もっと技術を磨かないとやばいなとなってました。

 

劇的な薬剤の進化とパーマの技術を伝える難しさ。

――これまで色んなブームがあったパーマ業界ですが、この業界の移り変わりに関してはどうでしょうか?

画像引用元:田中さんInstagram

僕自身は新製品の開発に関わるようになったのは20年くらい前なんですよ。最初は薬剤のことをメーカーの研究の方から直接教えてもらったりして、そこからだんだん開発にも関わるようになって。新製品のリリースに合わせてセミナーがバーッと増えるという感じでした。セミナーはカラーとパーマどちらもやってたんですけど、パーマのセミナーをできる人が当時は本当に少なくて。なんか意識してパーマをたくさんやってたというより、結果的にそういう仕事が多くなってたんです。結局やっぱりその、技術だけじゃなくてしゃべりとか、上手く伝えるっていう部分ができる人が少なかったのかなあと思います。自分で言うのもあれなんですけどね笑 ほんと技術が上手な人はいっぱい、いっぱいいるんですよ。

 

――いやあ、技術を伝えるってところも簡単ではないですよね…田中さんはパーマ業界の変化というか、良くなってきているところはどこだと思いますか?

やっぱり薬剤が劇的にここ数年で良くなってますよね。それこそ酸性の薬とかも、まあ昔から酸性の薬自体はあるんだけど、ちゃんと使いこなせるノウハウが出てきたというか。物がない中で技術的にどうやるか考えることも大事ですけど、やっぱりどうしても物に頼らないといけない部分はありますからね。ただ、そういった薬剤もある程度ベースの技術ができてないと使いこなせないですし、それさえあれば良いっていう甘い考えではいけないので、そこはどうにかしていかないとですね。

 

「学び」で挫折を乗り越える。お客様に美を諦めさせないための行動を。

――こう、たくさんの美容師さんが挫折や困難を経験してると思うんですが、そういった壁はどのようにして乗り越えられると思いますか?

画像引用元:田中さんInstagram

そうですね~、やっぱり学びを止めないということしかないと思います。その~自分だけでやってても限界はあると思うので、頼れるところは人に頼ってっていうのも大事だと思うし。いろんな人と接点を持つことで、新たなことに気づいたりっていうことも多分あるので。でもなんか、最近タダの情報が増えすぎたよね。僕としてはそんな良い情報タダで入って来ねえよって感じです。学びを止めないっていうのは、ある程度投資することとワンセットだと思うんですよ。僕もそういう意味ではかなり投資してきました。投資した分回収もしてますよ。

 

――そのちゃんと投資する行動力と、継続力、満足しないみたいなところですよね。

そう、なんかね、僕は「できる人がいるのに、自分はできない」っていうのが嫌なんですよ。極論、できないことがあってもサロンは回していけますよ。でもお客様も年を取ってくるんで、そうなると、今まで大丈夫だったことがそうじゃなくなってくるんですよ。その時に「もう年だからしょうがないね」ってお客様に諦めさせるのが嫌なんです。だからインプットのために今でもセミナーとかにはいきます。遠くても、もちろんお金を払っていきます。無料ってのはそれはそれでメリットがあるんですけど、やっぱお金と時間と足使わないと入ってこない情報ってのは絶対にあるので。

 

――本当にそうですよね!我々ビューティーターミナルも、結局は学びの「きっかけをつくる」場所なので…

だからちょうどね、ビューティーターミナルさんがやられてることっていうのは、そういう意味では、めちゃめちゃいい取り組みだと思ってるんですよ。何かしらの停滞を打破するには、学ぶことしかないと思いますね。

 

田中さんが考える「業界に必要な事」と自身の今後。

――最後に今後の美容業界に必要な事と、田中さんご自身の展望についてお聞かせください!

なんか、僕はもう50代でどちらかというと旧世代なので、思ってることがこれからもそうなのかはわからないです。けど、いわゆる「特化型」の人たちについて長いスパンで見た時に、危惧しているところはあります。何でもできる中で特にこれが得意、とかだったら全然良いんですけど、色んなものを捨てて勝負してる人が多く見受けられますよね。僕はお客様と一緒に年を取っていけるのが美容師の理想だと思ってるので、基本なんでもできないとダメなんです。 今自分が担当してるお客さんの質問に全てちゃんと答えられる状態なのかどうかってのがまず大事なんですね。なんだったらその人の人生を通して背負うくらいの。そうやって向き合っていればガツガツ集客をする必要はないし、その人が子供や知り合いを連れてきてくれます。うちのスタッフたちもそんな風に働いてます。2回産休、育休を取っても、待ってくれるお客様がいるスタッフもいますからね。

 

――なるほど。学び続けていないとお客様に諦めさせてしまう結果につながるんですね。そこに美容師の差が出てくる。

そうですそうです。ちゃんとバリバリにやれてる人って、やっぱりめちゃくちゃ勉強してますよね。まあ、特化型で売ることを僕は一切否定もしないですし、一部それでやっていけてる天才もいますけどね!でも、みんながみんなそうじゃないじゃんって思ってるんですよ。 やっぱりなんか、1人のお客さんと向き合うところで考えた時には、 僕の中では、分けるっていうのがあんまりなかったんですよね。

 

――確かに。本当に、田中さんのプライドというかポリシーがつまってますよね。

画像引用元:田中さんInstagram

美容師はお客様に食べさせてもらってるので、「自分はこれできないです」とか言って諦めさせるのは、そりゃないよって思うんです。今までも、「もうちょっとしたらこれできるようになるからちょっと待ってて」とか、「この人のためにこれをできるように頑張ろう」とか、できるようになろうというのがずっとありますよね。そういうのが結果的にはそのメーカーの商品開発とかに繋がるんですよ。

 

――いやぁ、本当に田中さんがずっとブレずにいた結果が今なんだなと。「お客様に諦めさせないために何ができるか」というお話はすごく皆さんに刺さると思います。

そうですね~。僕としても、こういうことを伝える立場にいると思うんで。求められるところではしっかりやりながら、今後の世代を育てていきたいです。美容って教育産業って言われますけど、やっぱりちゃんとそういったところを伝えるのが自分にとっても課題だと考えてます。

 

プロフィール

田中 征洋(たなか まさひろ)

switch hair(スイッチ ヘアー)|代表
1997年、福岡・大名でサロンswitchを設立。
「ダメージ&テクスチャコントロール」を提唱し、パーマで業界を牽引。セミナーや講師としての活躍に加え、多数のメーカーでも商品開発を行い、パーマデザインの普及と教育に尽力し続けている。

EDITOR’S REVIEW

いかがでしたか?常に学び続けることの大切さが、田中さんの実績やこのお話から非常に感じられて、筆者も背筋が伸びる思いで執筆しておりました・・!SNSが発達し、無料の情報がたくさん世の中にある現代だからこそ、自分で足を運んで行動した結果得られるものは、自分の成長によりつながってくれるはず。BTも学びのターミナルとして、皆さんが成長し続けられるよう、ブレずにサポートし続けます!