田中さんはこんな方

田中 元(たなか げん)

Vif(ヴィフ)のスタイリスト兼個人店オーナー。ハイライトやバレイヤージュ、白髪ぼかしなどを得意とするカラー特化美容師で、スタイリストのみならずカラー講師としても全国でご活躍されています。再現性と分かりやすさ日本一を目指し、カラー理論やカラーレシピなどの情報配信にも注力中。Instagramでは約4万人のフォロワーを誇ります。

 

はじめはフリーターだった。苦労の下積み時代を経て独立へ

――美容師さんになろうと思われたのはいつ頃でしょうか。

私は遅いですよ。フリーターをずっとやっていたので、美容学校は通信に行ったんですよ。それまでは20までアルバイトで…美容師でやっていこうかなって思ったのは21歳ですね。

――そのとき何かきっかけがあったんですか?

いや、特に何にもないですよ。パチンコ屋でバイトをしていたときの同僚が美容師やってみたいって言ってバイト辞めていったんですけど、「うちの美容室まだ人が足りないからアシスタント募集してるよ、免許なくても通信制の学校に通いながら働かせてくれるよ」っていう話をしていて。やっぱりなんか一つ手に職はあったほうがいいなと思って、当時洋服買ったりとか髪型変えたりするのも好きだったんで、まあ美容師やってみようかなってぐらいですね。全然志してはないです(笑)。

――なるほど。そこからアシスタントとして働き始め、学校は通信で通って勉強して、スタイリストまで?

はい、そうです。でもスタイリストは7、8年かかりましたね。多分31とか。ただ、カラーリングの選定とかは早くから入ることができました。結局カットとかはスタイリストになるギリギリまでできなかったんですけど、カラーの指名はすごい多かったんですよね。だから、ハサミを持つようになってからも全然お客様がいなかったわけじゃなくて、今までカラーをだけをやってた人もどんどん切るようになったっていう感じですね。

――なるほど。で、独立を1年、2年で?

これもまあその…オーナーが経営不振になったんですよ。12年目とかで。それで私、そこでスタイリストになって1年半ぐらいの時はもう店長みたいなことをやっていたので、居抜きで入ってもいいですか?ってその時のオーナーに言って。で、そのまま物件入らせてもらってっていうところですかね。

――元々いらしたところをそのままいただいたんですね。で、独立というか新しいお店でスタートして。それが何年前になるんですか?

2017年のオープンなんで8年になるのかな?まあでも本当地獄でしたね、色々と(笑)。

――そうですよね(笑)。また独立のタイミングも結構急というか。

そうですね、本当に急でした。今だったらそこは引き取らないですね。絶対やらないです(笑)。でも当時はまあなんか勢いがあったというか、とりあえず失敗してもいいかなと思ったんですよ。30歳くらいで、作るのに数千万かかる感じじゃなかったから、まあ仮に失敗してもどうにか立て直せるかなっていう感じでしたね。本当勢いしかなかったです。

 

「私しかできない」ではなく「誰でもできる」を目指す

――今のお店をスタートされて、講習を始められたのはいつごろだったんですか?

5年くらい前ですかね。

――講師活動のチャンスはどう掴んだんですか?

チャンスは、もう売り込んだっていう感じですね。私はディーラーさんにひたすら言いました。「講師をやってみたいんです。自分はこういうことができるんです」っていうのをひたすらいろんな場所で。そしたら、私がお取り引きしているディーラーさんと横の繋がりのある美容室さんが、「田中さんのカラーが良いからもしそういうお仕事があったら送ってくださいね」って紹介してくれたんです。だから最初の仕事はそこですかね。

とにかく人に伝えるっていうのをひたすらやっていました。インスタライブとか。人に伝えるっていうのを言語化して、どういうふうにやっていくのかをもう何回も繰り返しやって。後輩に教えるときとかもお店でセミナー形式でやってたんですよ。ホワイトボードを使ったりとか資料を作ったりとかして、うちのスタッフをセミナーの受講生だと思ってやっていました。そしたら、DMで臨店講習とかしてくださいって言われるようになったんですよ。そこからですね、来てくれませんか?とか、そういうトークとか。

画像引用元:田中さんInstagram(@vif.tanaka

私は、「私だけしかできない」っていうのの逆を行きたいんですよ。「誰でもできる」が一番の理想で、少しでもカラー楽になったよっていうのが皆さんに届けばいいなという思いです。自分がカリスマになるとかじゃなくて、覚えて変わったなっていう、その入り口を広げる役割がしたいなっていう感じですかね。

――なるほど。デザインカラーの「難しい複雑なもの」というイメージを脱却させるというか。

そうですね。例えばセミナーとかやったら、すごい教育に役立ちましたとか、次の日からハイライトができましたとか、そういう方が嬉しいんですよ。別にトレンドメーカーみたいなのをやりたいわけじゃないから。だから、今ある材料をいかにシンプルにしてお店に落とし込むかっていうような講習活動ですね。

 

大事なのは、インプットよりもアウトプット

――分かりやすく伝えるためにはどのような工夫をされていますか?

「どう思いますか?」って聞きますかね。質問が来ても答えを言わずに、逆にどういうふうに考えてますか?って普通に聞く。そしたら意外ともうそれが正解だったりするんですよ。正解だったら、そこを自分なりに砕くだけっていう感じですかね。

インプットよりもアウトプットの方が大事なんで、プレゼンをしてもらうっていうイメージです。人に答えを求めるんじゃなくて、逆に自分がどう思ってるかっていうのを吐き出してもらう方が絶対大事。そこを出したくなるようなセミナーというか、そういう伝え方・答え方っていうふうにしていますかね。

セミナーとかって、行ってみて、あれ、なんか自分のやり方と変わらなかったなとか、自分の方が上だったなって思っても全然いいんですよ。その講師がある一定の結果を出しているとしたら、それが答え合わせになるじゃないですか。あ、このやり方でよかったんだ、とかって。狭い中でやるよりは、新しい人がどうやってやってるのかを見る。それが結局大したことなかったとしても、逆にプラスになると思うので。

――確かに、そういう気づきも大切ですよね。

多分私は分からない人の気持ちが逆に分かるというか。アシスタント時代とかスタイリスト時代とかがとにかくひどかったのでね。だからそういう、「あー、辛いな」っていう気持ちを分かってあげられるような存在になれたらな、とは思います。

 

やる気が出ない時こそベストを尽くそう

――最もこだわっているところ、信念みたいなところはどこですか?

ベストを尽くすっていうところですね、一番大事にしているのは。セミナーとか接客もそうですけど、やっぱり手を抜かないでやりたいんですよね。自分の中のベスト、100%をなるべく出したいなって思っています。私の技術が上手い・下手とかじゃなくて、手抜きで失敗するのと100%出し切って失敗するのとは全然違うかなと思っているので。

技術的なところは…、私は別に無いですね(笑)。再現性とか分かりやすさとか、そういうのを一番にできたらなと思ってるぐらいです。上手さでは本当に上には上がいるけど、教えるのが上手いかどうかっていうのは分からないじゃないですか。だから自分は、そういう分かりやすさとか再現性っていうところに一番フォーカスを当ててやりたいなと思っています。

――100%のお話はインスタでも以前上げていらっしゃいましたよね。モチベが下がったときに見るやつで。

あ、投稿見てくださったんですね!あれは結構おすすめですよ(笑)。やりたくないときこそ一回100%出してみるっていうパターンですね。そういうときって多分100%出せてないことの方が多いんで。カラーの塗布一つ取ったとしても、なんか流れの中でやってることの方が多いと思うんですよね、仕事って。その流れに乗らないようにやってみると、意外とモチベーションが回復したりするっていうのがあるなと私は思ってるんですよ。一回、一日でいいから、モチベが下がってるなりの100%っていうのをお仕事にぶつけてみたら、なんか違う景色が見れたりするんじゃないかなっていうのはありますね。

 

視点を変えて、ダメな自分も受け入れる

――どうしても辛いときはどう乗り越えたらいいでしょうか?

そんなのはしょっちゅうですね。でも多分辛いのって、ほとんど人間関係とか自分の技術のなさに対しての嫌悪感とかが多いんじゃないかなぁと思うんですよね。だから、私の中で乗り越えるとしたら、“違う視点で見る”っていうふうにしてますね。

例えば人間関係で言うなら、その人がどういうバックグラウンドでなぜそういう発言をしたかっていうのをもう一回考え直してみる。直接的に自分の方に来る発言があったとしても、それとは違う見方が絶対あると思うんですよ。だから、なんでそういう発言になったのかを一度整理して考えるのは大事かなって。 自身が辛いなって思う時も、その辛さについて一回頭を整理して考える。そうすると、こう見たら逆にいいんじゃない?って違う視点が見えたりするんです。

心の持ち方って、ラクな部分とキツい部分の両方あった方がいいんじゃないかと思うんですよ。ちょっとストレスに感じるところがないと成長できないっていうのがあるから。だからキツい時は、「このストレスは後々絶対生きてくるな」って思うようにしてますね。

――なるほど。視点を変えるということですね。

そうですね。あとは、もう解決するまで落ちる。心がしんどい時にその場しのぎのことをやっても結局しんどいのがずっと続くだけになるので、あえてそれをしないようにする、そういう自分を受け入れるっていうところですかね。人に対して嫌悪感を抱いてしまう自分だったりとか、仕事になかなか着手できなくて「ダメだな自分」って思ってしまうこともあると思うんです。けど、そういった自分を受け入れる心の持ち方、客観視したときに褒めてあげられるような心の持ち方っていうのを大事にしていますね。

――ダメな自分も受け入れる。簡単なようでなかなか難しいですけど、確かに大事ですね。

ダメでいいと思うんですよね、別に。ダメでいいと思うんで、じゃあ良くなるにはどうしようかって徐々に一歩一歩進めていくっていうのがすごく大事。逆に私自身すごいメンタル弱い方なんでそう思います。

――そうなんですか?

そうですね。結構落ちる方ですし、いろいろ引きずる方だとは思うんですけど、だからこそやっぱりいろんな人の気持ちは分かります。なんていうか…、一部のカリスマ的な人がやっていることって全員が全員できるわけじゃないと思うんです。人と比べないことがやっぱり結構大事で、「あの人がすごいやってるからやらなきゃ」っていう思考はあんまり良くないかなと思いますね。自分自身がどう思うかでいいと思います。

――時と場合によってはそれがいい刺激になることもありますけど、逆のことも多いですよね。

そうですね。ライバルがいるっていうのはすごくいいと思うんですけど、SNSとか見て比べるのは絶対良くないですね。大谷とかイチローとか、全く比べているように見えないですよね。誰かが打ったから頑張ろうとか、多分そういうのないと思うんです。ただ純粋に自分がどうなりたいかって積み重ねた結果、ああいうふうになってるのかなって。

あとは、完全に本音で話せる相手を作っておくってことですかね。これも結構大事かなと思います。

 

大切にする柱を見つめ直す

――ちなみに田中さんはいらしゃるんですか?

私は妻ですね。逆にそこで取り繕っちゃってると結構しんどいんですよ。私の場合は、今優先しようと思っているのは仕事と家族なんですね。だから、なにかでものすごく辛くてしんどいなってなったとしても、妻がいて、その仕事をどんな形でもやれるっていう環境であれば大丈夫。そう思ってからは乗り越えられるようになりましたね。

多分みんないろんな柱を作っちゃうことが多いのかなと思うんですよ。けど、意外とそれ捨てちゃえば?っていうものも結構あったりするんです。まあ会社の悩みみたいに完全に切れるかって言ったら切れない部分ももちろんあるだろうけど。でも大切にしている柱を自分の中でもう一度考えてみるっていうのはすごいおすすめですね。

 

もっと多くの人に、教えることの充実感を

――最後に、これからのビジョンを聞かせてください。

大きな話で言うんだったら、講師の人とかがもうちょっと出てくるような感じになったらいいなって思ってます。自分の講習を通じて、人の教育とか講習活動をやってみたいなって思う人を増やせるように活動したいなと思いますね。やっぱり「美容師」っていうぐらいなんで、伝えていく楽しみもあると思うんですよ。なので、講習活動の素晴らしさだったりとか充実感っていうのを味わっていただけるようになったらいいな、そういうふうに活動していきたいなと思いますね。

人に教えて、その人が覚えてくれるっていうことの喜び。講習やって、DMいただいて、「田中さんに教わった方法でやったらすごいよくできました」とか、そういうのが今一番嬉しいですね。だから自分と同じ思いを感じられる人が増えたらすごく嬉しいなぁと思うし、仕事が楽しくなりましたっていう人を増やしていけたらなと思います。

 

プロフィール

田中 元(たなか げん)

Vif(ヴィフ)|スタイリスト 兼 個人店オーナー

10年以上カラー特化サロンにて働いたのち、サロン「Vif」をオープン。ハイライトやバレイヤージュ、白髪ぼかしなどを得意とするカラー特化美容師。スタイリストとしてだけでなく、カラー講師として全国で活躍。再現性と分かりやすさ日本一を目指し、カラー理論やカラーレシピなどの情報配信も行っている。Instagramでは約4万人のフォロワーを持つ。

 

EDITOR’S REVIEW

いかがでしたか??

様々なことを乗り越えてきた田中さんだからこその言葉、響きましたね~。また辛くなったらここに戻ってきて読みたい、そんな内容でした。
田中さんの講習活動を通じて喜びの連鎖が広がっていく未来は、想像するだけで素敵です✨

アンバサダーとしてもBTのことを支えてくださっている田中さん。今後のご活躍もお楽しみに~♪