時間のゆとりが金銭のゆとりを作る。好循環を生み出す黒木メソッドとは
――たしかに。美容師さんの収入が上がるとなり手も増えそうだなって思います。
黒木:でもちょっと今増えてきてるみたいですね。なりたい職業ランキングも昔ほど下がってないみたいだし。成功してる人たちが出てきてるってのがそのきっかけなのかなと思いますけどね。なんか最近ほら、若い子たちで月間売上1200万とか、すごいですよね。
僕もマックスいったら850ぐらいあったんですけど、もうめちゃくちゃ働いていましたからね(笑)。朝から夜まで死ぬほど仕事して。それでそんなもんですけど、正直それをもう一回やるかって言われたらやりたくないですもんね。だからすげぇなと思うんすよね。ただこれに関しては夢というより、もう働きすぎですけどね。
木村:うん。そうですね。
――その売り上げはどうやって作られてたんですか?
黒木:フルブックになればそんなもんだと思いますよ。ただそれが毎日なだけです。まあ休みないんでしんどいですけどね。で、今みたいにセミナーとかもやれる時間ないんで、月曜日だけがセミナーであとは常にサロンワーク。サロンワークはなんやったら予約取りにくいから、月曜日もやるみたいになって。で、営業時間も取れないから、極端な話16時間サロンワークしたりするわけですよね。
――追い込み方がすごいですね。でもそれはもう夢のためというか、自分が好きでやってるだけみたいな感じでつっ走ってるんですか?
黒木:うーん、需要のままにやり続けたらたまたまそうなったって感じだと思うんですけど、でもこれを止めなあかんなと思って止めたんです。このまま行ったら「美容師」で終わっちゃうよね?って。
木村:それはすごい思いますね。
黒木:僕はやっぱり教育がやりたかったんで、そのために時間をつくらなあかんなって思ったんです。それで客単価をバッコン上げたんですよ。倍以上に上げたらお客さんが1/3になって、時間が作れました。
だから今年でいったら年間で200本ぐらいセミナーやってるんですよ。セミナーをやる方が多くの人に影響を与えられるっていうか、自分一人ではモデルやお客さんって数決まってるから、これ以上の人に影響を与えることはできないんですよ。だったら美容師さん一人ひとりに自分たちのやってることを渡していった方が、当たり前にきれいが手に入る、どこに行ってもきれいになれる、ってなるのかなって思って今やってます。
収入の部分でもそっちの方が多くなったんですよ。美容師を死ぬほどやっていたときよりも、美容師しながら教育事業をやってる今の方が収入はもちろん増えたんで。そうなるとできることが増えるじゃないですか。金銭的なゆとりがあるから、もちろん従業員の福利厚生充実もあるし、社会貢献できるだろうし。自由がきくから、言い方悪いけど、ギャラがない仕事でも全然やれるし。
売上こんだけ作んないとって思っていた時期はこうしたことは多分できなかったです。
――黒木さんのところのスタッフさん見てると、みんな幸せそうで生き生きしているような印象がありますもんね。
黒木:まあこの仕事が好きな人ばっかりですからね。やりがいは多分みんなあるんでしょうね。「自分たちが誰かの役に立ってる」っていう幸福度は、多分うちのスタッフは高いと思います。
「ヘルシーにビューティーが手に入る世の中に」
――でもそれでいうと、10年後には黒木さんイズムが伝わっている美容師さんが増えそうですよね。日本だけじゃなくて海外まで。
黒木:10年後どうなっているかっていうご質問に対してはちょっと違うかもしれないですけど、10年後にはこうしておきたいっていう感じかもしれないですね。
だから今一つ目標としてあるのは、ブラジリアンブローアウトを0にしたいんですよ。ホルムアルデヒドが出る酸熱トリートメントっていうのは世界的なグローバルになってて、それをみんな命がけでやってる。で、黒人さんとかそこで亡くなってるわけですよ。その因果関係はちょっとはっきりしないんですけど、黒人で髪の毛を綺麗にしようとした人たちは割と早めに亡くなってる。これ少なくとも影響してるはずなんですよ。
木村:その出る蒸気がってことですよね。体内にホルムアルデヒドが入って。
黒木:はい、そうです。これが確実に命に危険を及ぼすって分かってるんで、美容師さんはガスマスクしてやるんですよ。でもお客さんはマスクせずに2ヶ月に一回やる。だからまあ当然絶対早く亡くなるわけですよ。でも、そういう風に命賭けんでもきれいにする方法があるよねって僕らは知ってるから、それをグローバルにしておきたいなと思いますね。
だから、ヘルシーにビューティーが手に入るようにはしておきたいなっていうのが僕の野望ですね。 僕お子さんのストレートパーマもやるじゃないですか。あれってまた別次元なんですよね。カットやカラー、パーマとは違う所で、悩みとかストレス、コンプレックスっていうのを一旦フラットにしようねっていうことなので。
本当に髪質が悪すぎて、それで差別を受けて自殺する人もいっぱいいてるくらいなんで。だからそこを一旦フラットにできればなと思います。カットで喜んでくれるのももちろん嬉しいです。ただ、今までなったことない髪質になるっていうのに対しての喜びってね、やっぱり大きいんで。
だから、あんまりこういうこと言いたないですけど、自分が今この美容業界にこの時期にいてるっていうのは、運命ってのはあると思ってます。ただ、それも自分で寄せるもんやとも思ってるんですよ。努力すれば良い運命が待っているし、そんなにやらなかったらそこそこの運命しかやってこないし。
それでも、自分がいろんなことをやってきて、今やってるパーマっていうのを一つ叶えた。それっていうのは、なんやろね、この時代にいた理由なのかなと思うんですね。この時代に、この黒木っていうのがいた。それは多分、この時代に「ヘルシーに髪の毛真っ直ぐになれるよって広めなさいよ」って、そういう運命やったのかなーというのは思ってますね。
木村流、ロジック固めの特化型美容師。その誕生秘話を聞く
――木村さんはいかがですか?10年後の美容業界について。
木村:えっと前の方に戻ると、1200万円プレイヤーの話がありました。1200万円プレイヤーになることっていうのは実は難しいことではありません。自分の場合はロジックをめちゃめちゃ固めたので。休みは全部きちんと取らせる、営業から営業内できちっと終わらせる、アシスタントは限定的に数名まで。
あとはメニューを特化することです。前髪カット、カラー、トリートメント。もうこれ一択で全ての人が全員埋まった時に、余裕で1千超えました。 やっぱりロジックをどういう風に固めるかっていうのの作り方が、いわゆる特化型美容師の走りになりましたね。それは縮毛矯正とか髪質改善でも同じことが言えると思うんですが、全部受け入れ型の美容師さんでその数字をやろうと思ったら店がパンクします。
――なるほど。これにはロジックがいるんだって気づいた瞬間はいつだったんですか?
木村:えっとー、周りを見ていて、古くからの考えや体制って変わりづらいということに気づいたからですね。みんな全てを受け入れて、その結果店が大変な状態になってしまっていました。でも自分は管理職だったので、それをやってしまったら終わりなんです。じゃあ決められた範疇でどうやってハイパフォーマンスを出すのかっていうのを考えた時に行きついたのが、そういう風なやり方でした。
「10年後は成長性は薄い」未来でイノベーションを起こすには?
木村:じゃあ10年後どうなんですか?っていう話になるんですけど、10年後っていうのは成長性が薄いと思ってます。なんでかっていうと、教えてくれる人がいないから。
根性論になっちゃいますけど、叩き上げで教わった人じゃないと根性論勢力が落ちてしまうので、基本的にまともな社会性が形成されないんですね。なので市場として成長することはないと思ってます。
だから、商品だったり一部特化したテクニックっていうのが高価値になるだろうと踏んでますね。 それで探したのが、縮毛矯正系。今世界に出していけるのはそれのみだと思ってます。ブリーチカラーがやりたいとかって、もちろんそれはそれでやってくれて全然構わない。でも、それをフリーランスとかっていうのでワンオペでやりきるにはかなりしんどい作業になってくる。原価率とかそういうのも考慮するとリスキーな作業になるんです。
じゃあもうちょっと単調な技術となると、結局作業員になってしまうんですね、クリエイティブじゃなくて。それでいいじゃんっていうことは、別にエステティシャンと変わらないわけなんですよ。同じことをすればいいわけだから、発展するかといったら発展しない。 あとは、日本が今サポート終わって下に落ちてしまっている現状なので、これを上に持ち上げるっていうのはかなりサイクルがかかる。とすると10年では取り戻せない。
なので、その後の人たちの未来性にかけて、何かしらの手を打っておくというような作業が大事かなと思っております。だからまあ、そういった意味では、子どもたちの世代にはデバイスを平気で与え、リアルコミュニケーションからは逸脱させる。要は、世界の人がやらないような子育ての仕方というのに対してトライさせる。そういう人たちが美容師になる。そこの部分で、またいいイノベーションを起こす。というサイクルを考えてますね。
――なるほど。時代が変わったというか、根性論とか限界超えろみたいな感じではないですもんね。
木村:いや僕は好きですよ、そういうの。でも時代がやっぱりそうさせてくれないと思うんで。
黒木:まあでもそうなってきましたよね。
木村:はい。そういう人はやっぱりもうあとは死んでいくのみになるので、そこに付き従っていることによって低所得をしめることになってしまう。時代が変わってきているからこその成長性を意識していきたいです。クリエイティブって言ったって、AIで出来てしまいますからね。今後はAIとの融合でのクリエイティブになってくると思うので、それを上手に生かせるような感じにならないと、現場主義者の場合は厳しいんじゃないかなと思います。
プロフィール
木村 直人(きむら なおと)
LOVEST KYOTO|エグゼクティブ・プロデューサー
devoted|エグゼクティブ・プロデューサー
国際文化理容美容専門学校卒業。日本武道館でのヘアショーに出演などステージにも立ち、ナチュラルで洗練されたヘアスタイルやヘアカラーが得意。美容系プロダクト開発や美容室の運営ストラテジー、アドバイザー、各種セミナーやオンラインサロンなど多方面で活躍し、美容業界において革新的な取り組みを行う。著名人からの支持も厚い。2022年11月よりBeauty Terminalのアプリアンバサダーを務める。
黒木 利光(くろき としみつ)
CHARLES DESSIN|オーナー&スタイリスト
美容技術に特化した7名のスペシャリスト集団「YAVENGERS」など、複数の美容集団に所属。三都杯グランプリ、ゴールドウェルカラーズーム2015、2016ジャパングランプリなどビッグタイトル多数。また、シザー1本で創り出す彫刻的なカットで日本一を4回受賞。時代性や女性像に合わせたデザイン提案、デザインカラー、傷まないパーマが得意で、著名人からの支持も厚く講師としても活動中。2022年11月よりBeauty Terminalのアプリアンバサダーを務める。
いかがでしたでしょうか?
働き方や世界規模の薬剤問題など、今の改革がより良い未来へと繋がることを改めて考えさせられましたね。
近々公開する第3回では、「家族サービス」と「美容が解決する社会問題」についてお話を伺っています。家族の在り方が変化してきており、また、様々な社会問題が浮き彫りになってきている今日。おふたりが考える家族の存在や美容と社会問題の関係性とは…。第3回もお楽しみに!