兄さんはこんな方! 

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都内の大手サロンを経て2015年に独立し、マンツーマンサロンをオープン。 独立を機に、様々なセミナーで習得した理論の検証と研究をスタートさせました。

2020年春からはInstagram上で自身の検証内容を投稿しており、サロンワークに即した検証内容と確かな研究結果が多くの美容師やメーカー開発者から支持されている美容師さんです!

最近では自身のオリジナル商材の開発、オンラインセミナーや業界誌の撮影など、様々な方向で活躍を広げています。2022年11月からはBTのアプリアンバサダーにも就任していただいています!

 

進学校から美容学校へ。「『もの』よりも『ひと』を相手にしたい」

――美容師さんになられたきっかけはどこにあったんでしょうか?

もともと漠然とクリエイティブな仕事が良いなっていうのはあったんです。実家の父親が家業で大工仕事みたいなのをやっていたので、スーツで決めて書類を持ってみたいなよくあるサラリーマン的な将来の図はあまりイメージがなかったです。

中学校くらいの時点では、建築士と料理人と美容師っていう三択がなんとなくあったんです。でも、美容師は国家資格だけど料理人は調理師免許持ってなくてもできる仕事と知り、最終的には美容師と建築士の二択になりました。

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ただ、建築士になるなら大学で建築科に行かなきゃいけないんで、高校は進学校に行ってどっちでも選べる状態を作っておきました。

で、高校在学中にアルバイトをしたりいろんな人と関わっていく中で、「もの」を相手にするよりも「ひと」を相手にする仕事のほうが楽しそうだな、向いてそうだなって思ったので、じゃあ美容師にしようかなって。

あとは田舎者なので単純に東京に行きたいというのもありましたね(笑)。それで東京の美容学校に行って、そのまま東京のサロンに就職しました。

 

マンツーマンサロンを開いた経緯とは。「兄さん」の由来も…!

――キャリアとしては東京のサロンに就職してスタイリストになって独立されたような感じですか?

そうですね。専門学校を卒業して入社した会社がとても良い会社だったので、そこで12年ぐらい働いて店長やマネージャーなども経験しました。

でも、その時に人を育てるのはとても大変だなと思ったんです。なので結局そういう経験があまり活かされないマンツーマンスタイルになりました(笑)。自分が楽しく仕事をする為にはマンツーマンがいいなって。

――マンツーマンサロンをオープンされて、今いかがですか?

僕は弟がいて、弟も美容師なのでサロンは二人でやってるんですよ。だから「兄さん」なんですけど(笑)。なので今はとても楽しいですね。自分の目の前のお客様に集中できるし、それに対しての時間も自分でコントロールできますし。

独立まで僕と弟はお互い10年くらい違う店で働いていたので、やっぱりシャンプーの仕方から何からいろいろと違うんです。ただ、それをあえて統一しなくていいと思ってやっています。

違う店が一つの店に、シェアサロンみたいな感じだけど、お互いお客さんの行き来はアリ。むしろ兄弟どちらに担当してもらっても良いと言われるのは嬉しいです。

例えば、新規の方で僕が担当した時に要望されたスタイルが、僕より弟が担当したほうが絶対気に入るだろうなって思うこともあります。その日は予約の関係上僕がやるしかないんですけど、次回予約のときに「多分今日切った髪型だったら、僕よりも弟の方が得意なので弟にやってもらった方が良いと思いますよ」って伝えます(笑)。

それでも僕を選んでくれたら嬉しいですけど、お客様が喜んでくれてサロンにまた来てもらえればそれが一番なので!もちろん弟から兄へ逆のパターンもありますよ(笑)。

 

「自分の価値観を捨てる」兄さんのカウンセリング流儀に迫る

――では、得意な技術がそれぞれあるみたいな感じですか?兄さんと弟さんと。

そうですね、そもそもテイストが違いますかね。弟は9割くらいの顧客様がショートヘアで、僕は得意な技術はこれといってないので。実は僕非常にセンスが無いんですよ。

昔話ですが、アシスタントのときにモデルカットで前髪を斜めに切ったら、先輩に「この人の前髪は斜めじゃなくてまっすぐの方が良いでしょ?」って言われて直された事がありまして…。僕はその時にまっすぐの方が可愛いと思えなかったんですけど、お客様は直した後の方が喜んでたんです。他にもそういうことが色々あって。

自分の好きを押し通すのも芯があって良い場合もあるとは思うんです。でもそれだと「美容師をやってる人」にはなれても「美容師で食っていける人」にはなれないと思ったんです。

なのでその時に一度自分の価値観をリセットしました。一般的に見てどう思うか、お客様がどう思うか、という目線で客観視したときに、それが良いか悪いかっていう自分基準の判断をしないように変えていきました。

――主観ではなく客観で捉えるということですね。その一般的な基準を理解するために情報収集などはされてるんですか?

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はい、いろいろ見るようにはしています。僕Instagram以外のSNSでは基本発信をしてないんですけど、目は通して流れを掴んだりとか、最近の若い美容師さんはこういうことを言ってるんだなとか、見てたりはしています。そういうSNSから今流行っているものの基準を作りますね。

その上で、その基準からどういうテイストに振るかを決めていきます。カウンセリングをしていく中で、そのお客様に対してここだったら外さないだろうなっていう場所があって。でもその人のネイルが、人があんまり使わないネイルの色してるなと感じたら、実はコンサバよりもちょっと攻めてるんじゃないか?とか、そういう内面の振り幅は考えたりしますね。

その上で、その人が本当にやりたいものはなんだろう?今求めているものはなんだろう?っていうのを探っていきます。そういう意味では、得意なのはカウンセリングかもしれないですね。お客様の声に出さない本音を妄想するのは得意です(笑)。

 

「過去最低の美容師です」その言葉から気づいたこと

――そうした関わりの中で、印象に残っているお客様はいらっしゃいますか?

いますね。その方は僕が担当して、その日は何も言わずに帰られたんです。ただ、後日お電話いただいて「ちょっと髪型のことでお話がしたい」とお店に来られて。その髪型はお友達や、ご家族とかからは好評だったようなんですが、ご本人の中ではそこまで短く切られると思ってなかったみたいで、泣きながら「こんな髪型じゃあ外歩けない。どうしてくれるんですか」って言われました。

もちろん僕の中では変な髪型にしたつもりはありませんし、カットを失敗したとは思っていませんでした。ただ、ご来店時サロン内が忙しい時間帯だったので、お客様は忙しいから適当に切られたと思ったのかもしれないです。

本人としてはもうその髪型じゃ外を歩けないって、泣きながらそういう話をされて。「あなたががどれだけの人に支持されているのか知らないですけど、私にとっては過去最低の美容師です」と言われました。

――その言葉は結構刺さりますね…。

仮にその髪型が似合ってたとしても、お客様本人が気に入ってないのですから、謝るしかないんですけどね。結局だからそこはなんでしょうね、僕から見ても他の人が見ても変じゃないんだから、その人がセンスないだけだよって開き直ってしまえばそれまでだと思うんです。

でも仕事としてお金を頂いているからには、その人が望むものを作ってあげないといけない仕事だと思うんで、やっぱりその時はお客様の「絶対こうしたくない」とか「これだけはやめて欲しい」っていうのを聞き取れなかったんだなって思いました。

数回担当している方だったので、少し高をくくっていたというか、理解した気になって甘く考えていた部分もあったかもしれないし。もしかしたら、営業は土日だったから忙しい中でそういった細やかな部分に気がつけなかったところがあったり、ちゃんと聞き取りができてなかったりしたのかなって反省する部分はすごくありました。

お客様が満足していなければ、美容師がどんなに「こんなに凄い技術をやりましたよ」って言っても自己満足で、それはダメな仕事だと思うので、その事を思い知らされましたね。

――なりたい姿は言っても、「これは嫌だ」みたいなことってなかなか言わないですよね。そこを聞ける美容師さんも少ない印象です。

あとはお客様の真意がどこにある分からない場合もありますね。梳いて欲しいと言われても、単に軽い感じに見せたいからそう言ってるだけなのかもはしれません。その場合必要なのはカットで梳くことだけが正解じゃなくて、カラーを明るくしたり表面だけちょっと巻いたりすればそれだけで軽く見えたりするので。

だから、お客様が「こうしてください」って言ってることを、そのまんま「分かりました」とやることだけが正しいことではないと思っています。なんとなく目線とか今までの話の中から「そう言ってるけど本当はこうなんじゃないですか?」ってこっちが言ってあげれば、「あ〜実はそうなんですよ!」っていうのが出てきたりします。

同じ内容を聞いても美容師の聞き方一つで話してくれる内容って変わってくるので、そこに気が付いてあげられるかどうかが大切だと思いますね。

 

真似るなら100%完コピせよ!兄さんから学ぶ技術習得の掟

――苦手な技術を学ぶ際のポイントなどはありますか?

自分がすぐに実行できるとか応用できる内容で勉強することが大事だと思います。

勤めているサロンにブリーチをされるお客様がほとんどいない美容師さんが、オンラインサロンで高明度のハイトーンブリーチカラーを勉強したとしても、学んだ事をすぐにはアウトプット出来ないですよね?もし技術ができるようになったとしても誰も喜んでくれないから自己満で終わっちゃう。

ブリーチを学ぶにしても、自分の担当したお客様がやってくれそうなブリーチの技術を学ぶ。いきなり凄い高みを目指しすぎない。そうすれば提案しやすくなるから実際にやってくれる人が増えて経験を積めるし、売り上げも上がるし、それで喜んでもらえたら自分のやる気も継続しやすくなるので。

自分がちゃんと実践できることを学ぶように、コンテンツをちゃんと選ぶというところですね。

――なるほど。具体的な習得方法などあれば教えていただきたいです。

すごい人たちの技術を真似るなら100%まるパクりすることですね。失敗する人に多いのは、レシピとか一部だけを真似してお手本と違う薬剤などを使っていたり、放置時間や塗布量などを勝手に変えたりしているケース。条件が全て重なって成り立つ事も多いので、勝手に自己流を取り入れた時点で失敗して当然です。

ただ僕がオンラインセミナーなどを見ていて思ったのは、凄い技術を普段からされている方って細かな気配りを当たり前にやってるので、あえて説明してないんですよ。

例えばブリーチ塗布するときに、上から下に塗布していく時、ハチまでは両面塗ってるのにハチから下は全部下から片面で塗ったりするんですよ。なぜかというと、ハチ下の毛は落ちてきた時にたまりやすいから、不必要にブリーチが溜まって地肌につかないように工夫しているんです。

でもそういうのって説明されないと流れで見てしまうから、なかなか気がつかないですよね。

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――兄さん自身はそのようなときどうされているんですか?

例えば今お話ししたブリーチの塗布で言うなら、スライスを頭のてっぺんから下まで塗るときに、全部で何パネルで塗ってるか、スライスの厚みが一定なのか、スライスの角度が途中で変わってないかなども見てます。あと、動画を見ながらタイマーで計って、ここからここまで何分かかってるかっていうところも見ますね。

自分が練習する時にはそこまで本当にまるまるパクってコピーすれば、かなり近い仕上がりになります。

でも、「ペーパー使って下からブリーチしていきます」って言ったら「とりあえずペーパー使えばいいんだ」みたいな感じでそこだけ真似して、塗布量とか塗ってる方法とか使うハケとか、そういうものは全部違うやり方なのに、ペーパー使ったから上手くいくはずと思ってる人がわりと多いんじゃないですかね?

もちろん使う道具とか薬剤も大切なんですが、やっぱり美容師は技術職なので、道具だけ変えたからといって上手くはならないです。

――完全にコピーした上で上手くいかなかった場合は、他の要因も探しやすそうですけどね。

まずは可能な限り完コピして、それでも上手くいかない時に質問すれば上達が早いと思うんですけどね。先生がアディクシーで染めているのに「イルミナだったらどうしますか?」って質問しちゃうから、まずはお手本通りアディクシーを使おうよって話になるんで(笑)。

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でもまぁ、考え方の原理原則を学べば応用ができるようにはなると思うので、そこの理論の勉強は大事だとは思います。ですけど近づきたい理想があるのなら、まずは素直に徹底的にまるコピすること、これが上達への近道なのは間違いないと思います。

 

現実的に考えて、今やっていることって本当に目標に繋がってる?

――美容師として、兄さんがどのような未来を描いているのかおうかがいしたいです。

うーん…。僕は美容師っていう仕事をちゃんと一般の企業とかと同じ仕事として考えてる部分があるので、いつ美容師をやめてもいい状況を作るのが大事だと思ってるんですよ。

というのは、例えば自分が意図してなくても事故に遭って、手が動かなくなってしまう可能性もある訳じゃないですか。そしたら今のようにサロンワークができなくなって、家族を守れなくなるんですよね。

もちろんそんなことは無いに越したことはないんですけど可能性は確実にある。つまりなんかこう…美容師に限らず職人的なお仕事をされてる方って、なんとな〜くでやってる人が多いんだろうなって思うんです。

夢絵空事のようなビジョンではなくて、現実的に一歩引いた目線で美容師という仕事をみることが大事なんじゃないかなと僕は思ってます。だから、生涯現役でやりたいとか、どんどん有名になってテレビ出たいとか、それもすごく素敵なことだと思うんですけど、僕はそこを目指してはいないですね。

美容師の仕事が大好きだからこそ、現場のサロンワーカーとしてでなくても、この仕事に関わっていけるような方法を考えています。

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――そこを目指している美容師さんは多い気がしますが、兄さんのような方はめずらしいですね。

業界の地位向上とか美容業界を盛り上げたいっていう美容師さんやメーカーさん多いですよね。もちろんそこを目指すこともとっても大事だと思うんですが、本当にそこを良くしようと取り組むのであれば、今やってることが本当にその目標に繋がるのかっていう部分に少し疑問を感じます。

「じゃあ具体的に現状は何がダメだと思ってるんですか?それを改善する為に何をしているんですか?」っていう質問に対して明確な答えがあればいいんですけど、その答えが明確に見えてこないことは多いです。

――目標に繋がっていないとはどのようなことでしょうか?

例えばカラー技術を向上させるセミナーがあったとして、そこで上達した技術で集客が出来るようになり、売上が上がるという結果が出るとします。その結果は素晴らしい事で意味もあるとは思うんですが、業界の発展や地位向上には直接繋がらないんじゃないかと思うんです。

お客様が行くサロンが変わるだけだと、美容業界の中でまわるお金の総額はあまり変わらないですよね?業界内で動いているお金のある場所のバランスが少し変わってるだけなので。

なので、本当に業界の発展や地位向上を目指すなら、年に一回しか美容室に行かない人がどうしたら定期的に通ってもらえるのかとか、例え料金が倍になっても通い続けてもらえるためのブランディングとか、そういった部分まで落とし込んだ講習が必要なのではと感じます。

 

自分から『美容師』を取ったとしても、残るものがある人間でありたい

――兄さん自身は、将来についてどのように考えていらっしゃいますか?

偉そうな事を言いましたが、僕は業界を変えていくみたいな大きな事が出来る器ではないです。なので、自分は自分らしく美容師という仕事を通して楽しく働ける環境をつくって、信頼できる美容師さんとか、他業種でも良いお付き合いができる人と関わっていきたいと思います。

現在ご縁をいただいて講師活動やメディアに出たりなどもさせていただいていますが、発信を始めた動機がそもそも集客とか認知度を高める為ではなくて、自分と同じように仕事を楽しんでいる信頼できる美容師さんとの繋がりを持つためでしたからね。

業界全体という大きな枠の前に、まずは自分の身近な人たちが楽しく幸せになれるような活動をしていけたらと思っています。

――有名にならなくていいって、そういう意味だったんですね。

有名じゃなくても凄い美容師さんって沢山いますからね!

極端な話、自分から美容師という肩書きを取られたら何が残るのかっていう時に、本当に凄い人たちはそれがあるんですね。美容師じゃなくても成功していたであろう人達ばっかりなんですよ、本当に第一線を走っている方は。

でも、中にはとりあえず目立ちたい、有名になりたいっていう気持ちが先行して発信したりしてる人も沢山いるんだと思います。ただそれだとちょっとしたグラつきがあった時に倒れちゃうんじゃないかな。軸となる部分がしっかりしてないから当然ですよね。

そういったあまり良くない例も今まで見てきているので、凡人な僕は現実的にいきたいなって思ってます(笑)。

 

兄さんのプロフィール

兄(あに)

都内の大手サロンを経て、2015年に独立。独立を機に、様々なセミナーで習得した理論の検証と研究をスタートする。 2020年春より、Instagram上で自身の検証内容の投稿をスタート。サロンワークに即した検証内容と、確かな研究結果が多くの美容師やメーカー開発者から支持される。 最近では自身のオリジナル商材の開発、オンラインセミナーや業界誌の撮影など様々な方向で活躍を広げている。

 

EDITOR’S REVIEW

今回はインスタグラムでの発信が注目を集める兄さんにインタビューさせていただきました!
お客様の言葉や今の業界の流れを、そのまま飲み込むのではなく、自分の視点で捉え直す姿は勉強になりましたね。さらにそれらが本質を突いていおり、その視点に新たな気づきを得た方も多いのではないでしょうか?
今後の兄さんの発信にもぜひ注目してみてください!