将来は保育士かバスプロか芸能で迷った
――美容師になろうと思ったきっかけを教えてください
最初は、美容師になるつもりはなかったんです。ずっと保育士になりたくて、高校は保育の勉強ができるところに行ってたんです。保育実習へ行ったりとか、裁縫とかピアノをやったりもしていたんですよ。 もう一つ、ブラックバスのプロになりたくて。学校を休んで釣りに行ってたんですよ。川の水温とか色とか深さとかをみて投げて、色々と試して研究し続けていました。あと1回でも午前の授業を休んだら進級できないってところまでいったら、次は午後の授業を休んで(笑)。 それと、高校2年から芸能系の養成所も通ってて、どうしようか悩んでいたんです。 でも、将来どうするんだって責められる時期あるじゃないですか? 俺がそうやってふわふわしてたから、母親に「男なんだから手に職つけろ」って言われたんです。それで悩んで、いつも通ってる床屋のおじちゃんに相談したら「床屋やればいいじゃん」って。髪型にこだわりが強くて、ファッションも好きだって知ってくれてたんですよ。コンテストとか好きだろって言われて、「じゃあ床屋になります」って決めました。高校の先生もびっくりですよ。
BT
――それで専門学校に行ったんですね。
専門は地元で、校舎も古くて生徒5人とかで先生もおじいちゃんみたいな所に決めました。親がシングルでお金がなかったのもありますが、僕の性格上、遊ぶものがあり過ぎると行かなくなると思ったので。学校へ通いながら、友達のお父さんの床屋さんでアルバイトをしました。学生のコンテストで全国大会にいくようになって、学校の先生に「東京行ってこい」って言われたんです。「じゃあ東京に行きます」って決めました。卒業して東京へ出て、駒込の住宅街の中にあるファミリーサロンで10年働きました。
極貧生活から始まった
――10年の間に困難などはありましたか?
上京してすぐですね。お金がなくて、手元にあるのは2000円のウィッグ一体。やばい!家賃払えない!生活していくの無理だ!ってなって親に相談したら、「夢のために東京出たんだから借金ぐらいしろよ」って。家賃も払えないし、電気もガスも水道も止まるっていうのをその時に経験しましたね。
――なかなか出来ない経験ですね。
そうですね。人って追い込まれてしまうことがあるけど、でも死ぬわけじゃないんですよ。ポジティブに考えて、家賃が払えなかったら払えるようにすればいい、電気止まったら水風呂入ればいい、冬だったら毛布にくるまればいいやって。ご飯食べられなかったらご飯食べさせてくれる先輩を見つければいいやって思っていましたね。
「理論は考えて作られたんじゃなくてやり続けてたから勝手にできた。失敗しまくったら成功する方法が分かった」
――ベーシックカットにこだわりを持つようになったきっかけを教えてください。
もともとは練習が大嫌いだったんです。学校も勉強も嫌いで、自分がやりたいって思ったことしかやりたくないわがままな子でした。スポーツもある程度できる、いわゆるセンス派だったんですよ。学校でも僕は練習を全くしてなくて、練習してる他の子たちよりもできちゃうんです。 だから、はたから見たら天狗だったと思います。コンテストでも東北で1位になって全国大会に行く。1年目でコンテストに5、6個出て全部上位。周りの6〜7年ずっとやってる人たちよりも上位だから、調子に乗ってました。
BT
――順風満帆だったんですね。
そんな時、床屋さんの結構ガチなコンテストに出ました。調子に乗ってるから「今回もいけんだろ。東京代表で全国出れる」みたいに思ってて。そしたらビリだったんですよ。「なんで勝てなかったんだろう」って自問自答して考えたんです。 その時に、僕はセンスだけでやってきたから基礎がないんだって気づいたんです。基盤になるものがないとしっかりと根が張れないから、その時だけの毎年咲けない花みたいだって思ったんです。それで基本ってなんだろう?って考えて、「ベーシックやってないな」と思ったのが始まりですね。
――そこで初めてベーシックカットを練習するんですね!
そうです。学生から初めたら1年ぐらいで終わる基礎を、僕は5、6年目ぐらいから始めたんです。でもこれが楽しくなってくるんですよ、僕は何でも研究するのが好きだから。習う人がいなかったから仁さんに頼んで、教えてもらって始めました。仁さんに教えてもらったものを持ち帰って、1日2〜3回の練習。継続力が大事だと思ったので5年ぐらい続けました。色んな人に「もうやんなくていいよ」とか「そんな意味ないから」って言われたけど、僕は満足できなかったですね。
――その継続力、すごいです!
最終的に、カットラインを虫眼鏡で見始めたり。肉眼ではそろっているように見えても、虫眼鏡で見るとそろっていないんですよ。それじゃ僕は満足できないから、はさみを削ったりもしていました。ウィッグに刺さるぐらいまで細くした、人には使えないはさみとかあるぐらいです。ベーシックカットにこだわり続けた結果、それが仕事になったんです。僕の作るスタイルは、ベーシックカットが基盤にあって、そこからデザインが生まれます。 その頃から性格も変わりましたね。もともと理論なんてなかったんです。だから僕は「理論は考えて作られたんじゃなくて、やり続けてたから勝手にできた。失敗しまくったから成功する方法が分かった」んです。
BT
コロナ禍にウイッグ30体で始めたインスタ投稿
――キャリアチェンジのきっかけは何ですか?
インスタですね。SNSって最初は面倒に思ってたんですよ。でもコンテストで優勝して研修旅行でロサンゼルスに行った時に、勧められたんです。「インスタやってないのか?やった方がいいよ」って、それで始めました。 最初は日常的なカットのスタイルとか、プライベート的な投稿をしていました。でも、お客様にSNSのマーケティング塾に関わってる方がいて、「SNSをちゃんとやった方がいいよ」って助言をもらったんです。それで「いいね」周りをするところからやっていました。でも集客には繋がっていなかったです。まぁ当時は固定給だったんで、あまり本気じゃなかったんですけどね。 で、コロナの時代になりました。
BT
――コロナの時にインスタが一気に伸びたんですか?
マスク営業が始まって、なんとなくお店が閉まるんじゃないかと思ったので、自宅で練習するためにウィッグを30体ぐらい買っといたんです。そしたらやっぱりお店が閉まることになったので、家で切ってるところをインスタに上げるようにしました。 その時に、インスタで住吉さんの赤ペン先生を見つけて送ったんですよ。そしたら見てもらえて連続でタグ付けしてもらえて、一気にフォロワー数が増えました。1日500人とか増えていって、それがまた楽しくなってくるんですよね。 あとその頃、仁さんとよくお話していて「ベーシックカットでオンラインサロンやれば?」って言われて、「じゃあやります」ってスタートしました。仁さんの非公認の弟子みたいに色んな人たちが認知してくれて。バズることなく、すこしずつフォロワーが増えました。
退社の決断は秒。入社するまでもスピード重視
――転職はいつだったんですか
転職は去年(2022年)の途中ですね。ずっとやめようとは思ってたんですけど、どうしようかなとずっと足踏みしていたんです。でもお客様のカットしてたら不意に「あ、やめよう」って思って、決めたその日に退社の連絡をしました。退社願いを出して、青木さんと小西さんが新しいサロンオープンするって聞いてたので連絡して、入社願いも全部すぐ出しました。やるとなったら一日で全部終わらせたかったんです。それから新しい店舗のオープンの準備が出来るまでの間は、フリーランスをやってました。
セミナーを通じてきっかけを作る。そして努力を継続させる
――今後の美容業界への想いを教えてください。
僕は、地域活性が一番、日本の業界のためだと思っています。都会に目を向けるんじゃなくて、地方に向けて何ができるかを考えています。ちょっと難しいんですけどね。自分ができないことは、ほかの人と協力できるような体制が一番いいと思う。 教育人って、その瞬間のきっかけしか与えられないんです。セミナーを通して、これから知識や技術を学ぼうというきっかけを作れるといいなって感じですね。セミナーを受けた人が次の人にも教えて、それが数珠つなぎになって、その地域内でも完結できるチームができるともっと良いなと思います。そのためのきっかけづくりですね。だから僕は走り続けなきゃいけない。僕は元々、床屋なんで、理容師さんの今後も良くなったらいいなと考えています。こうやっていろんなメディアに出ることで、だれかのセミナーに来るきっかけを作りたいですね。 セミナー自体が初めてですって方もいるんですよ。その瞬間にできることは「セミナーって楽しいんだ」って思ってもらうことなんです。「セミナーで勉強したっていう満足感を与える」ことではないんですよね。それが勉強する意欲になっていくと思っています。継続できるように、僕は人形を半分しか切らないんですよ。で、みんなに半分やってもらって後日送ってもらう。そうやって、その場で終わらせないで継続する力が強制的につく機会を作っています。
プロフィール
三瓶大志(さんぺいたいし) COA銀座|テクニカルディレクター 福島県から上京後、すぐにコンテスト優勝。ベースカットの技術を生かし現在ではオンラインサロンや全国でのセミナー活動も行う。インスタグラムはフォロワー1.9万人を誇る。理容師初のHAIR CAMP登壇。 Instagram:@tai43pei
いかがでしたでしょうか??
今回は銀座の大人気サロンで働く三瓶さんにインタビューさせていただきました!三瓶さんの技術と理論については知っていても、下積み時代については初めて知った方も多かったのではないでしょうか?センス一本でコンテスト優勝などの経歴から努力と継続に切り替わっていくストーリーにはインタビューしながらもなんだか熱い気持ちになりました。三瓶さんのこだわりの基準値が知れたことで感化された読者の方も多いはず。
三瓶さんはインスタグラムでの情報発信やオンラインサロン、セミナーも多くされているので気になる方はぜひ覗いてみてくださいね✨
それでは、次回もお楽しみに~